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教育基本法改正に反対する会長声明

2006.09.21
熊本県弁護士会 会長 竹中 潮

1 政府は,2006(平成18)年4月28日,教育基本法改正案(以下「改正案」という。)を国会に提出し,国会では衆議院教育基本法に関する特別委員会において実質審議に入り,現段階では次の国会で継続審議となることが決定している。

2 教育基本法は,憲法が保障する教育を受ける権利を実現するためにその理念を示した準憲法的な法律である。そのため憲法の理念や価値に反することは絶対に許されず,また子どもの権利条約などの国際準則に適合するものである必要がある。加えて,戦後の民主的な教育を支え,日本国憲法を実現してきたものが現在の教育基本法であることに鑑みると,これを改正するためには,立法事実の有無を現在の子どもの権利状況や教育現場の現状等に照らして慎重に判断する必要があると共に,広く国民の議論を経る必要がある。

3(1) 当会では,2004(平成16年)6月16日,教育基本法改正に関する協議会が「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告)」を発表し,これをたたき台とした教育基本法改正法案が性急に国会に上程されようとしていた状況に鑑み,2004(平成16)年10月15日,国民全体にわたる議論がほとんど喚起されておらず,その内容にも問題があるとして,教育基本法改正法案に反対すると共に,改正にあたっては十分な準備期間を設け,憲法・条約との整合性について十分な検討を加えることを強く求める会長声明を発した。
(2) しかし,上記会長声明以後も改正に関する議論はほぼ非公開で行われ,何ら国民全体にわたる議論が喚起される契機はないまま,本年4月13日,突然教育基本法改正に関する協議会から最終報告書が提出され,その後わずか2週間で国会に法案として上程された。
議論の過程が非公開であったことで,主権者である国民には,論点・問題点・改正過程が明らかにされず,国民全体での議論が行われていない状況は,2004(平成16)年当時と同じ状況である。憲法が保障する国民の教育を受ける権利を左右する重要な法案が,主権者である国民の議論にさらされないことが相当でないことは明白である。
(3) また改正案はその内容においても憲法等に照らし問題がある。
  すなわち,改正案の規定では,個人の尊厳が公共の精神の名の下に制約されてしまうおそれ,国・郷土を愛する態度を養うことを押しつけることが憲法が保障する内心の自由(憲法第19条)を侵害するおそれ,男女共学規定を削除することにより男女平等の理念を後退させるおそれ,本来私事である家庭教育への国家介入のおそれ,義務教育9年を削除することにより教育格差が助長されるおそれ,教育行政の教育内容への積極的な介入のおそれなど多くの問題点が存在し,これに対する十分な議論が尽くされているとは言い難い状況である。

4 上記の如く,改正案は多くの問題点を持ち,これに対して国民全体にわたる十分な議論が尽くされてはいない状況である。教育基本法は,我が国の将来を支える重要な指針となる法律であることからすれば,その改正の必要性から内容まで,広く国民の議論を経た上で,慎重に改正をなすべきものである。

  よって当会は,改正案に反対すると共に,国民全体にわたる十分な議論が尽くされるよう改めて要請する次第である。
以上