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共謀罪の新設に反対する会長声明

2005.11.04
「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下,「本法案」といいます)は,先の衆議院解散に伴って廃案となりましたが,今国会において同様の内容で再上程されることが決定しました。
本法案において新設される「共謀罪」は,長期4年以上の刑を定める罪に当たる行為について,団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者を,前提犯罪の軽重にしたがって5年以下又は2年以下の懲役・禁錮に処するというものです。
しかし,この「共謀罪」は,犯罪の実行に着手することはおろか,何らの予備行為をすることも必要なく,単に犯罪の共謀をするだけで処罰するものであって,近代刑法の大原則である罪刑法定主義に反するものです。しかも,対象となる罪は600以上と広範囲に及び,共謀という概念自体が曖昧であって,思想自体を処罰するおそれが強く,思想の自由や表現の自由などの憲法上の基本的人権に対する重大な脅威となることが危惧されます。そして,共謀の存在を立証するために,捜査における自白偏重を招く危険性が予想され,また,共謀の内容を構成する会話,電話,電子メールの傍受などの捜査手法が拡大することも十分懸念されます。
 また,この「共謀罪」は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の締結に伴う国内法整備として必要なものであると説明されていますが,同条約で規定されているいわゆる顕示行為(準備行為)を要件とすることもせず,それどころか,同条約が取締の対象として予定していた越境性(国際性)や組織的犯罪集団による行為も要件から欠落させています。その結果,「共謀罪」の対象範囲は同条約が要求する以上に拡大し,一般市民団体,企業,労働組合の活動にさえ及ぶことになると思われます。 
 このように,本法案に新設されている「共謀罪」は,国民の基本的人権を侵害し,市民生活にとって重大な脅威となるものであることから,当会は,その新設には強く反対するものです。


                平成17年11月4日
                  熊本県弁護士会
                   会 長  坂 本 邦 彦