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弁護士報酬敗訴者負担制度に反対する会長声明

2004.09.15
当会は、弁護士報酬敗訴者負担制度の一般的な導入については、訴訟提起抑制効果が大きい等として、平成13年3月13日付決議等によって、強くその反対を表明してきた。
 ところが、政府は弁護士報酬敗訴者負担制度の創設を内容とする「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という)を第159回通常国会に上程した。本法案は、当事者双方に訴訟代理人が選任されているときに、当事者の合意により、訴訟代理人の報酬にかかる費用を敗訴者に負担させるという訴訟手続上の制度を定めるものであり、敗訴者負担制度を一般的に導入するものではないが、以下のとおり多くの問題がある。
 第1に、本法案によれば、当事者及び代理人において、合意するか否かについての困難な選択を強いられるうえ、合意しない場合の裁判官の心証に対する配慮といった無用な心理的負担(いわゆる踏み絵)を強いられることになり、司法アクセスへの萎縮効果をもたらすことになりかねない。
 第2に、本法案は、消費者と事業者間、大企業と中小零細企業間等、一方が社会的・経済的に弱い立場にある当事者間の裁判外での私的合意における「敗訴者負担条項」について何らの手当も行っていないところ、そのような条項がもたらす法的効果について強い懸念が示されている。当会は、そのような私的合意が直ちに効力を有するという解釈に立つものではないが、訴訟外の合意による敗訴者負担を排除する措置が採られることなく本法案を成立させた場合には、このような者が訴訟によって権利主張することを躊躇させてしまい、司法へのアクセスを阻害する結果となる蓋然性がきわめて高い。
 第3に、司法制度改革審議会意見書でも、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入にあたっては、「不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いのあり方・・・等について検討すべきである」としているが、本法案が成立すれば、先例の乏しい分野での訴訟、被害者側から立証の困難な公害・医療過誤訴訟等の提起が著しく困難となることは明らかであるところ、こうした「導入しない訴訟の範囲やその取扱いのあり方」といった基本的な課題について、本法案の作成過程では何ら検討がなされていない。
 当弁護士会では、上記のような問題についての十分な検討と配慮がなされないままでの本法案の成立は、「市民に利用しやすい司法の実現」という司法制度改革の理念に反するばかりでなく、憲法で保障された裁判を受ける権利を実質的に阻害することとなることから、断固として反対である。
 よって、その廃案を強く求めるものである。 


以上

2004(平成16)年9月15日
熊本県弁護士会
会 長  津留 清