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国選弁護人の報酬引き下げに反対し、増額を求める会長声明

2004.08.06
 国選弁護人の報酬額は、2000年(平成12年)度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について8万6400円とされ、その後2年間据え置かれていた。ところが、平成15年度においては8万5600円に減額された上、今年度はさらに8万5200円への減額が決定している。
 国選弁護制度は、刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権(第37条3項)を実質的に保障しようとする制度である。この制度趣旨に照らせば、国選弁護人の弁護活動を十分に保障するための経済的担保が必要不可欠であり、国選弁護人に適正な報酬が支払われることは、憲法上の要請といっても過言ではない。
 我が国の刑事裁判において、国選弁護人が選任される比率は7割超と極めて高いものとなっている。しかしながら、国選弁護人は私選弁護人と何ら遜色のない弁護活動が要請される一方で、その報酬は求められる弁護活動の内容に比べ極めて低額
となっている。しかも、記録謄写料、接見等の旅費日当、通信費などの実費については原則として支給されず、事実上報酬に含まれているのが実情である。このような実情においては、国選弁護制度そのものが国選弁護人の犠牲と負担によって維持されていると言っても過言ではない。
 更に、今般、刑事訴訟法の改正により、2006年(平成18年)度から被疑者段階での国選弁護制度(公的弁護制度)も実施されることとなったが、この公的弁護制度の実現には、現状を大きく上回る弁護士の確保が要請される。そのためには公的弁護人の報酬を適正なものとし、刑事弁護の担い手を十分に確保することが不可欠の前提と言うべきである。
 ところが、国選弁護制度が現状のように国選弁護人に犠牲を強いる形で存続し、さらに万一被疑者段階の公的弁護人にも不十分な報酬額しか支給されないことになれば、国選弁護人及び公的弁護人の犠牲のみを一方的に増大させることになり、国選弁護・公的弁護制度そのものが崩壊することになりかねない。
 よって、当会は、本年度政府予算における国選弁護人報酬の引き下げに抗議し、その大幅な増額を強く求めるとともに、来る被疑者段階の公的弁護人への十分な報酬確保のためにも、必要且つ十分な予算措置を講じられるよう強く要望するものである。


以上
 
2004(平成16)年8月6日
熊本県弁護士会
会 長  津留 清