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司法修習給費制の堅持を求める緊急声明

2004.06.10
熊本県弁護士会
                      会 長  津留 清
第1 声明の趣旨
当会は、司法修習給費制の廃止に強く反対し、同制度の堅持を強く求める。
第2 声明の理由
司法修習生の給費制廃止に関する動きは、弁護士会の反対運動等によって、廃止法案の今国会提出が見送られた経緯があった。
給費制廃止の議論の発端となった司法制度改革審議会意見書は、給費制の在り方を検討すべきとするにとどまり、その廃止を宣言したものではなかったし、法務省も、給費制の廃止には慎重であると考えられていたのである。
しかし、今日に至って、司法修習の給費制を廃止しようとする動きが急展開を見せ、司法制度改革推進本部事務局は、秋の臨時国会に廃止法案を提出しようとする動きを顕著にしている。
 この動きは、財務省の財政制度等審議会が「平成16年度予算編成の基本的考え方について」(建議・平成15年6月9日)の中において、給費制の早期廃止を提言して、財務省を中心とした圧力が強まる中で、司法制度改革推進本部法曹養成検討会においても、昨年7月14日の第18回検討会において、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との座長とりまとめを行ない、本年になってからは、5月18日、6月15日、7月28日と3回の日程を立て続きに入れて、貸与制の議論が行なわれるなど、推進本部事務局の廃止法案提出への強い意欲を示すものである。
 当会は、このような動きを強く懸念し、廃止法案の提出に反対すると共に、給費制の堅持を強く求めるものである。
 そもそも司法修習制度は、社会の秩序と正義を維持、実現し、基本的人権を擁護する人材を養成する基礎的社会インフラであり、給費制は、修習生に一定の生活保障をする事によって、修習に専念させる事を目的とするものである。すなわち給費制は、社会の基礎的インフラである現行司法修習制度と不可分一体のものとして制度設定されているのである。
これを廃止することは、21世紀の社会が求める高い質の法曹を養成するという法曹養成制度の目的に背馳するものである。
また、給費制は、法曹三者の公益性を担保する役割を歴史的に果たしてきているものであって、これを廃止することは今後の法曹の在り方に重大な影響を与える。
さらに、今次の司法制度改革を実現するためには、国には必要な財政上の措置を講じることが義務付けられているのであり(司法制度改革推進法6条)、21世紀に必要な法曹を養成する事に、財政事情を理由とした廃止論を持ち出す事は、法曹養成における国家の計を誤るものと言わざるを得ない。
 なお、給費制廃止に伴う貸与制の議論は、現行司法制度と不可分一体となっている給費制の本質を見誤るものであり、返済免除の議論も含めて、司法修習制度が社会の基礎的インフラである事を見落とした議論であると共に、財政事情を優先し、人材養成を劣位におくという議論の延長にあり、到底容認出来ない。
以上のとおり、当会は、司法修習給費制の廃止に強く反対し、同制度を堅持することを強く要望するものである。
以上