熊弁の意見

  1. ホーム
  2. 熊弁の意見
  3. 改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

2009.08.31
 2006年(平成18年)12月,経済・生活問題での自殺者が年間約7000人に達し,自己破産者も18万人を超え,多重債務者が200万人を超えるなど,社会問題として深刻化する多重債務問題を解決するため,出資法の上限金利の引下げ,収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを内容とする改正貸金業法が成立した。

 同改正法成立後,政府は多重債務者対策本部を設置し,同本部は【1】多重債務相談窓口の拡充,【2】セーフティネット貸付の充実,【3】金融経済教育の強化,【4】ヤミ金融の撲滅を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして,当会も「自治体職員のための多重債務対策支援講座」を開催するなど,自治体と連携して多重債務対策に取り組んできた結果,多重債務者は大幅に減少し,着実にその成果を上げつつある。

 ところが,同改正法の完全施行を目前に控えた現今,一部に,消費者金融の成約率が低下し,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどを殊更強調して,改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調が見られるようになった。

 しかしながら,2008年(平成20年)においても,経済・生活問題での自殺者数は,未だに7400人と多数にのぼり,自己破産者数も減少したとはいえ,12万9000人に達している現状では,同改正法の完全施行の先延ばしや金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は,再び自殺者や自己破産者,多重債務者の急増を招きかねず,断じて許されない。

 こうした,多重債務対策や地方消費者行政の充実は,今般設置される消費者庁の所管ないし共管とされ,喫緊の課題とされていることも踏まえ,当会は国に対し,以下の施策を求める。

改正貸金業法を早期(遅くとも本年12月まで)に完全施行すること。
自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
ヤミ金融を徹底的に摘発すること。
                 平成21年8月31日
                      熊本県弁護士会
                         会長 成瀨 公博