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荒瀬ダム撤去方針の撤回に関する会長声明

2008.06.18
熊本県弁護士会 会長  高木聡廣

 本年6月4日,蒲島郁夫熊本県知事は,定例記者会見において,八代市坂本町の県営荒瀬ダムを撤去する方針を撤回する旨の発表をした。

県営荒瀬ダムの撤去に関しては,全国初のダム撤去であることから,撤去方法や撤去による環境への影響等が注目され,当会においても調査・検討を重ね,熊本県に対しても意見を述べてきた。

 荒瀬ダムの撤去方針が決められた背景には,荒瀬ダムによる振動,悪臭,洪水等の被害や環境破壊などの問題があり,地元からの要請に基づき,費用対効果についても十分検討した上で,当時の潮谷義子熊本県知事がダム撤去を決断したという経緯がある。以後これまでダム撤去の方法をめぐり住民も含めた丁寧な議論が進められ,ダム撤去の工法について決定するまでに至っている。

ところが,今回の荒瀬ダム撤去方針の撤回は,これまで積み上げられてきた議論を根本から否定するものであり,民主的な手続を無視している点において極めて大きな問題がある。

また,荒瀬ダムを存続させることによる環境への影響や地元住民の上記被害を考慮すれば,一定の費用を投じてでも荒瀬ダムを撤去すべきであるという結論も十分に考えられるところである。しかし,今回の撤去方針の撤回においては,そのような地元住民の被害や環境への影響に対して十分な配慮がなされたか疑問であり、この点においても大きな問題がある。
そこで,当会は,熊本県知事に対し,荒瀬ダムの地元住民や荒瀬ダムによる環境の影響を受ける流域及び八代海域の住民及び自治体の意見を十分に聞き,環境問題への調査も行った上で,荒瀬ダム撤去の是非を慎重に判断することを強く要請するものである。