検察審査会統廃合に反対する会長声明
2008.03.25
熊本県弁護士会 会長 三藤省三
最高裁判所は,このほど,過去20年間で事件数が年間平均1件未満であった検察審査会を他の検察審査会に統廃合するとの再編案を発表した。この再編案によれば,大規模地裁管内では新たに14ヶ所増設されるものの,現在全国で201ヶ所ある検察審査会のうち50箇所は廃止されることになる。熊本県では,県内6ヶ所の検察審査会のうち,玉名,山鹿,人吉,天草の計4ヶ所もの検察審査会が統廃合の対象となっており,地裁管轄内では全国最多の廃止数となっている。
この統廃合の理由は,検察審査会の審理の充実強化のために検察審査会を事件数に応じて再配置することにより,審査員に選任される市民の負担を軽減し,適正かつ充実した審理を図るためであるとされている。そして,審査員の負担としては,例えば審理が無くても定例会議や会長互選等で最低年4回出席しなければならないことなどが挙げられている。
しかし,そもそも検察審査会制度は,起訴独占主義・起訴便宜主義を採る我が国の制度のもとでは,市民が検察権の行使を牽制しうるほとんど唯一の手段である。とするならば,単に取扱件数が少ないからといって当該地域の検察審査会を廃止することは,当該地域の住民による公訴権行使に対する民主的コントロールの機会を不当に奪うことになり,司法改革が目指した国民の司法参加の要請に逆行することは明らかである。また,審査員の負担にくらべ取扱件数が少ないというのであれば,まずは広報・宣伝活動の充実により市民の利用を増やすよう努力することが先決であり,そのような努力をせずしての統廃合は,地家裁支部の統廃合と同様,「審理の充実強化」に名を借りた地方の切り捨て政策といわねばならない。
そして,今般の法改正により,平成21年5月から検察審査会の起訴相当議決に法的拘束力をもたせたり,弁護士である審査補助員から法的アドバイスを受けることができることとなったが,今回の統廃合は,このような検察審査会の機能を強化する制度改正の趣旨にも反するものである。なお,審査員の負担については,定例会議と会長互選が各別に開催されるという現在の審査会の非効率的運用を見直すことで改善されるべきである。
以上の理由により,今回の検察審査会の統廃合には反対する次第である。