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生活保護名簿の漏えいに関する会長声明

2008.02.18
熊本県弁護士会 会長  三藤省三

 本年2月12日,人吉市の福祉課保護係の職員が,ヤミ金融と見られる業者に生活保護世帯の名簿などの個人情報を提供していたことが判明した。
 この名簿漏えい事件は,生活保護受給者に対して多大な不安を与え,同種名簿を管理する各自治体等に対しても,「公務員の研修・教育は徹底されているのか」との疑念を抱かせる結果となった。また,生活保護の申請を福祉事務所の窓口で拒否する,いわゆる水際作戦が問題とされている中で起きたものであり,保護申請者に対し,さらなる萎縮効果を与えかねない点でも,看過できない事態である。生活保護受給者等の名簿を管理する各自治体において,より一層の管理体制強化が望まれるところである。
 同時に,この事件の背景には,未だ解決されない多重債務問題,特に行政職員をも常軌を逸した行動に追い込んだ悪質なヤミ金融業者が広く存在しているという事情がある。関係機関が協力し,ヤミ金融撲滅のために取り組むことが強く求められる。さらに,報道によるとこの人吉市職員がヤミ金融に手を出す原因は,複数の消費者金融に借金があったことであり,ヤミ金融が多重債務者をカモにしている構図がここでもはっきり見て取ることができるのであって,ヤミ金融撲滅のためには多重債務問題の解決が喫緊の課題であるということである。
当会においても,これまでヤミ金融撲滅・多重債務問題解決のために活動してきたが,今回の人吉市職員が弁護士の助力を受け得る相談窓口に辿り着くことなくこのような事件を引き起こしたことは,極めて残念である。当会は,今後もヤミ金融撲滅・多重債務問題解決に全力で取り組む所存である。
ヤミ金融の根本的な撲滅には,警察当局による徹底的な摘発が不可欠である。しかし,警察当局によるヤミ金融の摘発も一時行われたものの,近時再び増加しているヤミ金融被害に対しては十分な摘発が行われていない。また,警察窓口において,「借りたものは返すのが当然」「元金は返すべき」等の対応をされたとの被害者の声もある。今後,流出した名簿を利用してさらなるヤミ金融被害が発生することも懸念され,特に人吉地区を管轄する警察当局にはより一層の取り締まり強化と被害者に対する適切な対応を望むところである。
そこで,当会は,このような事件の再発防止,そして,ヤミ金融撲滅・多重債務問題解決のため,関係各機関に対し,以下の対策を講じるよう求める。

■各自治体に対し
職員,とりわけ個人情報を管理する者に対する守秘義務の徹底
職員が多重債務問題を抱えていないかの早期把握及びその対策
特に警察をはじめとする関係各機関に対し
■特に警察をはじめとする関係各機関に対し
ヤミ金融撲滅のため全力を挙げること
■関係各機関に対し
多重債務者に対する相談窓口の充実