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福島第一原発事故に伴う徹底した健康調査を求める会長声明

2011.09.15

 福島第一原発からの放射性物質の漏出という事態を受け、福島県と厚生労働省は、福島県民の健康調査を行うこととしている。これは、被災者の健康管理及び健康不安に対応するうえで、極めて重要な意義を有する。
 水俣病の公式確認から55年を経た今なお、水俣病被害者としての救済を求める人が後を絶たない。これは、行政が不知火海沿岸住民の徹底した健康調査を実施してこなかったためとの指摘もある。
福島第一原発事故では、政府が避難指示を出した区域に居住していた住民に限らず、自主避難者を含め、放射線被曝の可能性のある住民について、民間の医師の協力も得て広く調査すべきである。特に、放射線の影響を受けやすい乳児、幼児、児童の健康調査は最優先で実施されるべきである。
そして、被曝の影響を調べるうえで、事故後の行動や健康状態の聴き取り、内部被曝線量の測定のほか、尿検査、甲状腺の検査も必要である。
 低線量被曝の場合、すぐに健康被害が明らかになるとは限らない。短期間で調査を打ち切るようなことがあれば、例えば数年後にガンを罹患した場合、それが福島第一原発からの放射線を被曝したことによるものかどうか争いになる可能性もある。十分な健康管理と健康被害に対する適切な補償を行ううえで、長期の継続的な健康調査が必要である。
 そして、健康調査をふまえての対応を適切に行うためには、調査結果の迅速な情報開示も不可欠である。
当会は、水俣病の教訓を福島第一原発事故に生かすべく、国と福島県に対し、放射線被曝に関する徹底した健康調査と調査結果の迅速な情報開示を求める。

2011(平成23)年9月14日

熊本県弁護士会
会長  高島 剛一