法曹養成制度改革検討会議の中間的取りまとめに対するパブリックコメント
①?? ?項番
第3の2(1) 教育の質の向上,定員・設置数,認証評価
②?? 意見内容
法科大学院の地域的配置につき、単に、枠外で、「なお、法科大学院の地域的配置や夜間開講等の特性を有する法科大学院に対する配慮についても検討が必要である。」とするのではなく、枠内で、「次世代法曹養成は地域の法科大学院及び弁護士会が担うべき性質のものであること及び多様な法曹の養成を実現する必要があることからして、法科大学院は、地域に適正に配置されるべきである。この地域適正配置を維持するため、地方法科大学院に対しては、積極的に適正な公的支援を行うべきであり、また、必要であれば、大規模校・中規模校の定員削減を図ることを優先して実施すべきである。」旨を明記すべきである。
③ 理由
1 司法制度は、「社会のインフラ」であり、全国どの地域においても、国民のだれもが享受できることが必要である。法科大学院は、このような社会のインフラを提供するための最も基本的な施設であり、地域社会における司法制度の育成・充実に欠くことのできないものである。さらに、地方法科大学院は、各地域の法曹志望者のうちその在住する地域において法曹となるための教育を受けることを希望する者に対して、その希望をかなえることができる唯一の機関である。
ところで、法科大学院は、学校教育法上の大学院とされたため、法曹志望者は、大学卒業後、さらに2~3年の期間、法科大学院で学ぶことを要求させることとなっている。しかも、多様なバックグランウドを持った者が法曹となることができるように、法科大学院には、法学部の新卒者のみならず、他学部の新卒者や法学部及び他学部の既卒者及び社会人経験を有する者も入学するようになっている。このようなことから、法科大学院の学生の年齢は、概ね22歳以上である。このような年齢の者は、その者のみならず、その家族を含めた生活を維持するという家庭の事情を背負っていたり、経済的事情等で地域を離れられないという状況にある者も多い。そのような状況にありながらも法曹になる希望を有する者に、その在住する地域で法曹になる機会を与えている存在が地方の法科大学院である。
このように、地方法科大学院は、地域を離れられないという状況を背負った法曹志望者の法曹になる機会を与えているとともに、法曹の多様性確保に重要な役割を果たしている。そして、司法過疎の解消、地域司法の充実・発展、さらには、地方自治・地方分権を支える人材の育成にも貢献していること等を併せて考えれば、法科大学院の地域適正配置は、制度の見直しに当たっての単なる考慮要素ではなく、もっとも尊重すべき理念のひとつとされるべきである。
2 また、当会が支援する熊本大学法科大学院(熊本大学大学院法曹養成研究科)は、熊本県在住者はもとより、鹿児島県、宮崎県、長崎県などの隣県からも多様な人材を受け入れ、九州地区の中心に位置する法科大学院として、九州地区在住の法曹志望者に対し、法曹となるための教育を受ける機会を提供してきた。
その結果、同法科大学院を卒業し司法修習を終了したものの進路は、約58パーセントの者が熊本県内で、さらには合計約85パーセントの者が熊本県を含む九州内で、弁護士として活躍している。
このように熊本大学法科大学院をはじめとする地方法科大学院は、多様な人材を受け入れ、地域社会に根ざした法曹を生み出してきた実績 がある。
以上のとおり、地域においては、次世代法曹の養成を地域の法科大学院と弁護士会の協力のもとに推し進めている。このような地域における次世代法曹養成の実績をさらに伸長させていくことこそ、法曹の多様性確保に資するものである。
しかるに、法科大学院の定員削減や統廃合が、司法試験の合格率、入学者選における競争倍率、入学定員の充足状況等の数値基準によって進められるとすれば、多くの地方法科大学院はますます困難な状況に置かれ、撤退を余儀なくされることが必至である。
次世代法曹の養成は、各地域において、地域の法科大学院及び弁護士会が担うべきであるから、法科大学院は、地域に適正に配置されるべきである。そのために地方法科大学院については、公的支援の見直しの対象とするのは適当ではなく、むしろ国は、財政面をはじめとする積極的な支援策を行うべきである。
3 さらに、多様な法曹を養成することを実現するためには、法曹養成機関の面からみて、少数の法科大学院で法曹を養成することは適切ではない。法曹養成を担う法科大学院及び弁護士会が多く存在することが必要である。法曹養成機関に入る人材が多様であっても、法曹養成機関が少数で結果的に金太郎飴のような教育になってしまえば、法曹として多様な人材の確保は難しい。そこで、法曹養成機関自体が多様であるべきである。
多様な法曹養成機関を実現するためには、首都圏や大都市圏に集中している法科大学院を弁護士会の協力が得られる地域に分散させることが必要である。
この分散を実質的に進めるため、首都圏・大都市圏の大規模・中規模定員の法科大学院の学生定員を削減することが必要である。
以上