「特定秘密の保護に関する法律案」に反対する声明
1 政府は,「特定秘密の保護に関する法律案」(以下,「同法案」という。)を策定し,今秋の臨時国会での成立を目指している。
??? 同法案は,「防衛」「外交」「外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分野の情報のうち,公になっていない情報でその漏洩が我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるために特に秘匿することが必要であると行政機関の長が判断した情報を「特定秘密」と指定し(同法案3条1項),「特定秘密」の取扱業務に従事する者がその業務により特定秘密を漏らした場合等(同法案21条),「特定秘密」を保有する者の「管理を害する行為により特定秘密を取得」した場合等(同法案22条)に最高で懲役10年の刑罰をもって対処することを主な内容とする。
2 防衛,外交,安全脅威活動の防止,テロ活動防止という特定秘密として指定可能な国家情報の対象分野は広範かつ不明確であるうえ,「その漏洩が我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」との限定はあるものの,行政機関が指定権限を有するものであるから,違法秘密や疑似秘密(時の政府当局者の自己保身のための秘密)を「特定秘密」に指定してしまう危険があり,ひいては重要な国政の課題について国民の判断を誤らせ,国民の知る権利を害し国民主権原理にも悖るものであり,到底許されない。
3 同法案は,「管理を害する行為」により特定秘密を取得する行為を処罰対象としているが,いかなる取材活動が「管理を害する行為」なのか不明確であるうえ「特定秘密」の範囲が不明確であることと相俟って処罰範囲が無限定に広がり,このことは罪刑法定主義に反するといわざるを得ない。
また,取材者は処罰を避けるために上記4分野への取材そのものを自粛する事態にもなりかねない。取材の自由及び報道の自由は,憲法上の権利である表現の自由に直結し,また,憲法で保障された国民の知る権利に資するものとして極めて重要な憲法上の権利であり,同法案によって民主主義と個人の自由のために極めて重要な人権が侵害されるといわざるを得ず,憲法上到底許されない。
4 当会は,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,同法案が立法化されることに強く反対し,政府が同法案を国会に提出しないことを強く求める。
2013(平成25)年10月9日
熊本県弁護士会
会 長 衛 藤 二 男