婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受けて家族法における差別的規定の改正を求める会長声明
2013年9月4日最高裁判所大法廷は,嫡出でない子の法定相続分を嫡出である子の2分の1とする民法第900条第4号ただし書前段(以下「本件規定」という。)について,憲法14条1項に違反して無効であると判示し,本件規定が合憲であるとの最高裁大法廷1995年7月5日決定を変更した。
当会は,2010年5月13日に公表した会長声明において,同規定は,出生時に父母が婚姻しているか否かという子自身には変更不可能な事実をもって行われる差別であると主張して,早急に改正することを求めてきた。今回の最高裁決定は,「父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保護すべきであるという考えが確立されてきているものということができ」「立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われている」と判示した。今回の決定は,当会の前記会長声明や従来からの日本弁護士連合会の主張と合致するものであり,極めて妥当なものとして高く評価する。
これまで国連の自由権規約委員会,女性差別撤廃委員会,子どもの権利委員会及び社会権規約委員会は,日本政府に対して,本件規定についての懸念を表明し,本件規定を廃止することを繰り返し求めてきた。婚外子と婚内子の取り扱いを平等にすべく差別を撤廃することは国際的潮流であり,相続分につき制限を設けていたドイツ,フランスにおいても既に相続における平等が実現している。国は,速やかに本件規定を削除し,婚外子と婚内子の相続分についての取り扱いの平等を実現すべきである。
なお,「嫡出でない子」ないし「非嫡出子」という用語は差別的であるとし,国連の子どもの権利委員会から用語の廃止についても勧告されている。改正にあたっては,差別的な用語をも改めるべきである。
また,日本政府は,自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から,上記婚外子差別のほか,選択的夫婦別姓を定めていないこと,女性のみに6ヶ月の再婚禁止期間を定めていること,婚姻適齢について男女の差を設けていることについて,繰り返し懸念を表明され,民法改正のために早急な対策を講じるよう要請されてきている。しかし,これらの民法規定もいまだ法改正はなされていない。
当会は,国に対し,婚外子の差別的な法定相続分を定める本件規定の改正と併せて,夫婦同姓しか認めない民法第750条,再婚禁止期間を定める民法第733条,婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条など家族法における差別的規定を,速やかに改正することを強く求める。
2013年(平成25年)10月9日
熊本県弁護士会
会 長 衛 藤 二 男