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集団的自衛権行使の容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する声明

2013.11.12

1 集団的自衛権を容認する最近の動き
 2012年12月の衆議院選挙で自由民主党が大勝し政権与党になって以来、集団的自衛権行使を容認する動きが急速に進んでいる。
 安倍首相は、2013年2月8日に、私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」という)を約5年ぶりに再開させた。安保法制懇は、2008年に「集団的自衛権行使を求める報告書」を提出し、政府の憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を認めるよう求めた。今回は前回の検討事項に加えて、国家安全保障基本法の制定など新たな課題についても検討するよう諮問した。

2 集団的自衛権に関する政府見解
 政府は、従来から、憲法9条下で許される自衛権の行使は、①我が国に対する急迫不正の侵害が存在すること、②この攻撃を排除するため、他に適当な手段がないこと、③自衛権行使の方法が必要最小限の実力行使にとどまること、の3要件に該当する場合に限定している。そして、これを前提として、政府は、「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法9条の下において許容されている自衛権行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」(1981年5月29日政府答弁)との見解を表明し、その後、今日まで、政府見解は維持されている。

3 日弁連の意見と当会の立場
 日弁連は、第48回及び第51回人権擁護大会で指摘したとおり、戦争は最大の人権侵害・環境破壊であり、平和的生存権及び憲法9条は極めて先駆け的な意義をもち、特に憲法9条は集団的自衛権を禁止している。また、日弁連は、2013年3月19日に「集団的自衛権行使の容認および国家安全保障基本法案の国会提出に反対する意見書」、同年5月31日の定期総会において「集団的自衛権の行使容認に反対する決議」を採択するなど、集団的自衛権の行使に反対しており、当会も同様の立場をとるものである。

4 国家安全保障法案の問題点
 国家安全保障法案は、「我が国の、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態であること」(法案10条1項)を、我が国が自衛権を行使する場合の遵守事項と定めている。つまり、我が国は当然に、国際連合憲章が定める集団的自衛権を、憲法第9条の制約なしに行使できることを前提としているのである。このような憲法で禁止されている集団的自衛権を認める法律を国会に提出することは許されない。
 また、国家安全保障法案は、憲法上許されていない集団的自衛権の行使を下位法である法律で容認しようとするものであり、時の政府の判断で憲法解釈を変更することは政府や立法府を憲法の制約下に置こうとした立憲主義に違反し到底許されるものではない。

5 結論
 当会は、立憲主義の見地から、時の政府の都合で憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を容認すること、及び憲法9条が禁ずる集団的自衛権の行使を認める法案が国会に提出されることに、強く反対する。

?2013(平成25)年11月12日
熊本県弁護士会 会長 衛藤 二男