特定秘密保護法案の衆議院における強行採決に抗議し、参議院における慎重審議を求める会長声明
去る11月26日、「特定秘密の保護に関する法律案」(以下、特定秘密保護法案という。)が衆議院本会議において与党及び一部野党の賛成多数で可決され、参議院に送付された。
当弁護士会は、これまで、特定秘密保護法案が国民の知る権利・言論の自由、プライバシー権等の基本的人権を侵害する虞が極めて強く、国民主権原理にも悖るものであり、日本国憲法の諸原理を尊重する立場から、同法案の立法化には強く反対してきたところである。
特定秘密保護法案は、その内容において、国民の基本的人権や民主主義の原理にとって極めて重要な問題点を含む法律案であるのみならず、手続面においても、法案の概要公表から3ヶ月足らずで衆議院で審議入りしており、国民の理解や議論が十分にされないまま、しかも、言論界・マスコミ等の各界・各層を含む多くの国民の反対の意思表明を無視して、極めて短期間の内に審議らしい審議すらされていないことも大きな問題である。
本年6月に南アフリカ共和国の首都プレトリア近郊のツワネという所で国連関係者を含む70カ国以上の専門家500人以上が携わって2年以上をかけて作成された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(「ツワネ原則」)は、国家秘密の必要性を認めつつ、国が有する情報の公開原則とのバランスに配慮することを勧告している。また、政府に対して情報を秘密にする正当性の証明責任を課し、秘密を漏洩した公務員に対する刑事罰についても公開された情報が国の安全にとって「現実的で特定できる重大な損害」を引き起こす危険性が大きい場合に限るとしている。このたび衆議院で可決された特定秘密保護法案は、最新の国際的な議論の成果であるこの「ツワネ原則」を全く反映していない。
このように、特定秘密保護法案は、日本国憲法の諸原理に反し、国民の基本的人権を侵害するのみならず、国際的な原則である「ツワネ原則」を一顧だにしないものであって、到底是認できるものではない。 よって、当弁護士会は、衆議院においてこのような法案が採決のうえ可決されたことに強く抗議すると共に、「良識の府」である参議院が慎重な審議を尽くしてその機能を十全に果たすよう強く要請する。
2013年(平成25年)12月2日
熊本県弁護士会
??????????????????????????????????????? 会 長 衛 藤 二 男