集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
1 安保法制懇の報告書から与党協議へ
?????? 安倍晋三首相が設置した私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」は,2014年5月15日,集団的自衛権の行使を認めるべきとする報告書を提出した。これを受けて安倍首相は,同日,集団的自衛権の行使容認に向け,与党協議を進めていく方針を発表した。
集団的自衛権とは,自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されてないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利とされている。
2 日本国憲法と政府解釈
日本国憲法は,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」(前文)ため,平和的生存権を定め,9条で戦争放棄,戦力不保持と交戦権否認を定めるなど,非軍事の徹底した恒久平和主義を基本原理としている。これは,武力紛争の絶えない現代国際社会にあって,人類の進むべき未来を指し示す先駆的な意義を有する。
この徹底した恒久平和主義のもと,政府は,「憲法9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであって,憲法上許されないと考えている。」(1981年5月29日答弁)との解釈を今日まで維持してきた。
ところが,安倍首相は,これまで積み重ねられてきた憲法解釈を閣議決定ないし立法によって変更しようとしており,立憲主義の見地から到底容認できない。
3 日弁連と当会の立場
日弁連は,2013年5月31日の定期総会において「集団的自衛権の行使容認に反対する決議」を採択するなど,集団的自衛権の行使に反対しており,当会も,同様の立場から,同年11月12日,「集団的自衛権行使の容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明」を発表するなどしてきた。
4 集団的自衛権の行使は限定できない
安保法制懇の報告書は,集団的自衛権を行使するには「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」などの条件を付すことで,限定容認であると強調しようとしているが,裏を返せば,時の政府が日本の安全に重大な影響を及ぼすと判断すればいつでも行使できるということであり,全面容認にほかならない。
5 集団的自衛権の行使は許されない
当会は,憲法解釈を変更し,憲法9条が禁ずる集団的自衛権の行使を容認することに断固反対する。
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2014(平成26)年5月21日
熊本県弁護士会 会長 内田 光也