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行政書士法改正に反対する声明

2014.06.16

 日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正し、行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求等の不服申立ての代理権を行政書士の業務範囲とすることを求めてきたが、日本弁護士連合会をはじめ、日本司法書士連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本弁理士会、全国社会保険労務士会連合会等の反対を受け、2014年3月、不服申立て代理権の対象を、「現に行政書士が作成した書類にかかる許認可等」に限定した修正案を作成し、これを今国会に議員立法として提出させようとしている。しかし、同年4月25日、上記各団体は上記修正案についてもこれに強く反対する意見を発表している。
 以下に指摘するとおり、このような修正をしたとしても、行政書士に不服申立代理権を与えることは国民の権利利益の擁護を危うくするおそれがあることから、当連合会及び当連合会所属の各弁護士会も、上記修正案に反対する。
 反対の理由は以下のとおりである。
1 行政書士制度の趣旨は、行政の補助機関として行政事務の円滑な実施に寄与することであり、その職務は争訟性のないものが中心である。しかし、行政不服申立て制度は、行政庁との間で争いのある事実関係や法律関係について行政庁に対して不服を申し立て、行政庁の違法・不当な処分を是正し、もって国民の権利利益を救済する制度であり、行政事務の円滑な実施という行政書士制度の趣旨とは本質的に相容れない。
2 行政書士の業務は、依頼者の意思内容を整序して官公署に提出する書類等を作成するというものであって、そこに行政法の専門的知識は要求されていない。行政書士資格に求められる知識、能力にも固有の専門性はない。
 行政不服申立てにおいて国民の権利利益を救済するためには、行政不服審査法のみならず、行政事件訴訟法や民事訴訟法にも精通し、かつ行政法の法解釈及び事実認定を行うことのできる知識、能力が不可欠であるにもかかわらず、行政書士資格にはこのような行政不服申立てを代理する知識、能力が要求されていないのであり、行政書士の能力担保は充分といえない。
3 行政不服申立ては、国民と行政庁との対立関係を前提とするものであるところ、行政書士の監督や懲戒は都道府県知事が、行政書士会に対する監督は、都道府県知事が、日本行政書士会連合会に対する監督は総務大臣が、それぞれ行うものとされている。したがって、このような行政書士が、行政不服申立てにおいて、果たして行政庁と対立関係に立って国民の権利利益の救済を図ることができるのか、大いに疑問がある。
4 行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げるなど、弁護士は既に行政手続業務にも代理人として相当関与してきており、今後も関与は拡大していくことが予想され、行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性は認められない。
 なお、当連合会及び当連合会所属の各弁護士会では、早くから法律相談センターの開設に取組み、地方自治体や各種団体(行政書士会を含む。)と協力した様々な形態の無料法律相談も行ってきた。そして、2012年10月26日の当連合会大会では、「弁護士アクセスの改善を進める宣言」を採択して、国民の「裁判を受ける権利」(憲法32条)の実質的保障を実現すべく努めているところである。
 以上の理由から、当連合会及び当連合会所属の各弁護士会は行政書士に行政不服申立代理権を付与することに強く反対するものである。

?

2014(平成26)年6月13日

?九州弁護士会連合会 理事長  森   雅 美
福岡県弁護士会 会 長  三 浦 邦 俊
佐賀県弁護士会 会 長  牟 田 清 敬
長崎県弁護士会 会 長  髙 尾   徹
大分県弁護士会 会 長  岡 村 邦 彦
熊本県弁護士会 会 長  内 田 光 也
鹿児島県弁護士会 会 長  堂 免   修
宮崎県弁護士会 会 長  柏 田 芳 徳
沖縄弁護士会 会 長  島 袋 秀 勝