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貸金業の規制緩和に反対する会長声明

2014.07.11

1 報道によれば,自由民主党は,小口金融市場に関する小委員会において貸金業の規制緩和を検討し,今秋の臨時国会に議員立法として貸金業法改正案の提出を目指すとのことである。規制緩和の内容は,一定の条件を満たす認可貸金業者に限って,現在20%の貸出上限金利を29.2%に引き上げるという上限金利の引き上げや,個人の総借入額を年収の3分の1以内に制限する総量規制を撤廃し,貸金業者の自主規制に委ねることを柱とする。

2 現行貸金業法は,多重債務問題を解決すべく上限金利引き下げ・総量規制を柱として,平成18年12月に自由民主党安倍政権下で与野党の全会一致で成立し,平成22年6月に完全施行されたものである。
 また,平成19年以降,官民をあげた「多重債務問題改善プログラム」に基づく相談窓口の拡充等も積極的に行われてきた。
 これらにより,借入件数5件以上の多重債務者の数は,平成18年時点の230万人から平成26年4月時点で18万人にまで減少し,平成18年に年間約17万人であった自己破産者の数も平成25年には年間約8万人にまで減少した。
 平成18年以降,多重債務問題は確実に減少し,大いに成果を上げてきたところである。

3 報道では,今回の貸金業の規制緩和は,零細な中小企業や個人の短期融資の需要があることを背景とするとされる。しかし,真に必要なのはセーフティネット,低金利融資制度や総合的な経営支援策の拡充であって,高利貸付けへの回帰ではない。
 また,上限金利の引き上げは,政府から「健全経営」であると認可された貸金業者に限ることになっているが,多重債務問題が貸金業の大手企業を含めて引き起こされてきたことは顕著な事実であり,「健全経営」であるから問題ないという関係にない。
 さらに,総量規制の自主規制化による緩和についても,平成18年貸金業法改正以前から存在していた業界内の自主規制基準が全く機能していなかったことは顕著な事実であって,およそ歯止めとなるものではない。

4 貸金業の規制緩和は,これまでの多重債務問題に対する取り組みの成果を無に帰せしめるばかりでなく,多重債務問題を再燃させうるものである。
 当会は,これに対し,断固として反対する。

2014(平成26)年7月11日
熊本県弁護士会  
会長 内田 光也