「熊本大学大学院法曹養成研究科の募集停止」に関する会長声明
新聞報道によれば,熊本大学は、熊本大学大学院法曹養成研究科(以下「熊本大学法科大学院」という。)の入学者の募集を平成28年度から停止する方向で調整に入っているとのことである。
熊本県弁護士会(以下「当会」という。)は,法曹養成・研修委員会を通じて,熊本大学法科大学院の設立当初より,実務家教員の派遣はもちろん,リーガル・クリニックへの協力,エクスターンシップの受入れ,アカデミック・アドバイザー制度への講師派遣等を通じて,熊本大学法科大学院を全面的にバックアップしてきた。
当会が,熊本大学法科大学院に対して支援を続けてきたのは,地域における法曹養成を通じて,法の支配を日本の隅々まで行き渡らせるという司法制度改革の目的を実現するためである。
そして,熊本大学法科大学院は,これまで熊本県在住者はもとより,隣県等からも多様な人材を受け入れ,九州地区在住の法曹志望者に対し,法曹となるための教育を受ける機会を提供してきた。また,熊本大学法科大学院を卒業した司法試験合格者39名のうち,20名が当会の会員となり,地域司法の発展に貢献すべく,職務や会務に尽力している。
確かに,法科大学院を取り巻く現状は厳しく,いくつかの法科大学院は入学者の募集停止を発表している状況にある。しかしながら,地方の法科大学院はその地域における法曹養成の要となる存在であり,法科大学院の地域適正配置が維持されなければ,都市部と地方の格差は拡大する一方である。特に、熊本大学法科大学院は、熊本を含む九州地方の地理的に中心にある特性を活かして、様々な理由から熊本や九州地方から離れることのできない学生を受け入れるとともに、社会人経験者を積極的に受け入れてきた。その結果、九州地方出身者及び社会人経験者の卒業生から司法試験合格者を輩出してきている。
また、もし熊本大学法科大学院が入学者の募集停止をするならば,今後は熊本に在住しながら勉強をして法曹を目指すことができなくなるなど、九州全体の法曹志望者、とりわけ社会人経験を有する法曹志望者に深刻な影響を与えることは必至である。かかる事態を回避すべく,当会は,熊本大学法科大学院の存続を強く求めるとともに、今後も地域における法曹養成の灯を消すことのないよう、熊本大学法科大学院に対するあらゆる協力を継続していく所存である。
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平成27年2月27日
熊本県弁護士会
会 長 内 田 光 也