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安全保障関連法案に反対し、憲法を守る宣言

2015.05.29

 2014年7月1日、政府は、政府自ら日本国憲法に反するので行えないとしていた集団的自衛権の行使の一部容認を柱の一つとする閣議決定を行った。これを受けて、現在、安全保障関連法案が国会に提出されているところである。

 しかしながら、これらの閣議決定や法案は、前文や第9条を柱とする日本国憲法の恒久平和主義の基本理念を損なうものであるとともに、憲法改正の手続を経ずに政府が解釈を変更することにより事実上の改憲を行うものであって立憲主義にも反している。日本国憲法の恒久平和主義は、かつての歴史の反省の上に立ったものである。先の大戦で、日本はアジア・太平洋地域の住民に甚大な被害を与え、約2000万人の死傷者を出し、また、数々の人権侵害を引き起こした。日本人についても、国内外で膨大な数の戦争の被害者を生み出した。我が国の戦争犠牲者の数は、約310万人といわれている。日本国民は、このような歴史の反省を踏まえて、恒久の平和を決意し、日本国憲法の前文と第9条を掲げる憲法を選択したのである。この憲法は、戦後70年もの間、改正されずに保持されてきた。そして、日本は、戦争をしない国として、世界の人々の信頼を得てきたのである。

 ところが、現在、日本国憲法の恒久平和主義は、かつてない危機に瀕している。

 前記2014年の閣議決定では、我が国に対する武力攻撃が発生していなくても、緩和された要件を満たせば、武力行使が可能とされている。これは新たに集団的自衛権行使の容認に踏み出すものであり、憲法第9条に違反する。また、同閣議決定では、「現に戦闘行為を行っている現場」ではないとする場所には、たとえ戦闘地域であっても自衛隊を派遣でき、他国軍隊への支援等ができることとするなど、他国での武器の使用を伴う積極的な活動を進めていくことが企図されている。

 今般の安全保障関連法案は、これらを可能とする法整備をしようというものである。法案は、自衛隊を派遣し、外国の軍隊に弾薬・燃料等の軍事物資を補給したり、機雷を除去したりするなど、外国で戦争している他国の軍隊に対し積極的に協力するのを可能にすることを目指している。これは、事実上、我が国が他国の戦争に参加するに等しいものであって、日本国憲法第9条に真っ向から違反して許されない。また、戦争をしている他国軍隊への積極的な協力は、我が国が武力紛争に巻き込まれる危険を伴う。自衛隊員が人を殺し、殺され、また、後方の日本国民が危険にさらされる事態に陥りかねない。全世界の国民に平和的生存権を認め、「武力の行使」や戦力の保持を禁じ、交戦権を否認している憲法の下で、このような事態を引き起こしかねない法制への改変は許されない。

 さらに、このような重大な問題であるにもかかわらず、主権者である国民に十分な説明がなく、国民の間に存在する反対の声を無視して、従前は政府自身が日本国憲法上できないとしていた活動を可能にする旨の閣議決定がなされ、それを受けての今般の安全保障関連法案の国会への提出なのである。憲法に拘束されるはずの政府が、恣意的に憲法の解釈を変更し、日本国憲法の恒久平和主義に抵触するような政策を進めていくことは、手続面でも、憲法に基づいて政府の統治を行う立憲主義に反するものである。

 戦争は、最大の人権侵害であり、人権は平和の下でこそ守ることができる。

 戦前、弁護士会は、法律家団体として、戦争防止の役割を果たすことができなかった。その反省を踏まえて、弁護士法第1条には、「基本的人権を擁護し社会正義を実現する」という弁護士会の使命が規定されている。私たちは、日本国憲法の恒久平和主義や立憲主義を擁護する立場に立って、今般の安全保障関連法案に強く反対の声を上げるとともに、平和と人権、そして立憲主義を守る取り組みを進めていくことを、ここに宣言する。

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2015年(平成27年)5月27日

熊本県弁護士会

提 案 理 由

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第1 はじめに 平和と人権及び立憲主義の危機

 戦後70年を迎えた現在、日本国憲法の恒久平和主義はかつてない危機に瀕している。また、現在、憲法の本質である立憲主義そのものがなし崩しにされようとしている。

 政府は、昨年7月1日、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定(以下「本閣議決定」という。)をなした。本閣議決定は、従来、政府自身が、日本国憲法の下では許されないとしていた集団的自衛権の行使を容認する立場を明らかにするとともに、自衛隊を海外に派遣して戦争を遂行する他国軍隊を直接支援したり、任務遂行のための武器使用を認めるなどの活動を拡大する方針を決定したものであった。

 本閣議決定を受けて、政府はアメリカ政府と協議して、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を国内法制に先行して見直した。そしてこの5月、安全保障法制や自衛隊の海外活動等に関連する法制を改変する法案を国会に提出した。

 この安全保障関連法案は、日本国憲法の前文や第9条の下でこれまで築いてきた平和国家日本の国の在り方を根本的に変えるものであり憲法に違反する。また、立法により事実上改憲を行うものであって立憲主義にも反している。

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第2 日本国憲法の徹底した恒久平和主義

1 戦争の惨禍の反省に基づく恒久平和主義

 日本国憲法の恒久平和主義は、先の大戦の痛切な反省の上に立っている。軽々に捨て去ることは許されない。

 今日では日本軍の謀略であったことが明らかになっている柳条湖事件(1932年)を口実に開始された中国への軍事的な侵略は、盧溝橋事件(1937年)などを機に本格化した。敗戦までの間に、日本は、アジア・太平洋地域への侵略により、同地域の住民に被害を与え、約2000万人の死傷者を出したとされている。その間、数々の重大な人権侵害が引き起こされた。日本軍の多くの兵士もまた、戦死し、病死し、餓死していった。日本国内でも、沖縄における地上戦、広島・長崎への原爆投下、大空襲等により、膨大な数の人々が戦争被害を被った。我が国の戦争犠牲者の数は、約310万人と言われている。

 戦争は最大の人権侵害であり、人権は平和の下でこそ守ることができる。

 日本国民は、このような戦争の惨禍を前にして、痛烈な反省とともに、二度と自らが戦争の惨禍を起こさず、戦争で殺されもしないことを決意した。また、世界の人々が戦争に巻き込まれるようなことのないような国際社会であることを願った。そのような意思に基づき、恒久平和主義を基本原理とする日本国憲法を制定したのであった。そして実際、日本は戦後一度も直接的には戦争をすることなく、平和国家の礎を築いてきた。

2 戦争の違法化の徹底

 日本国憲法の恒久平和主義は、戦争を違法とする国際社会の先進的な思想の系譜の先頭にあるものであった。

 第一次大戦後、戦争のもたらす深刻な被害を前に、国際社会は、戦争を違法としなければならないと考えるようになった(1928年パリ不戦条約)。その段階で禁止されることを想定していた戦争は、「國家ノ政策ノ手段トシテノ戰爭」、すなわち侵略戦争を指しており、すべての戦争を違法とはしていなかった。その後、第二次大戦に突入し、これまでを上回る深刻な被害が人々にもたらされた。戦争による被害の実相に直面し、その反省の下に制定された国連憲章は、平和的解決義務を具体化し(国連憲章第2条第3項)、「武力による威嚇または武力の行使」を原則として禁止し(国連憲章第2条第4項)、戦争の違法化を徹底することになった。ただ、その段階でもなお、国連が軍事的措置等を取るまでの間の暫定的な措置として、個別的又は集団的自衛の権利を害するものではないとするなど(国連憲章第51条)、平和主義が徹底されているとは言えなかった。

 このような思想の流れの中で制定された日本国憲法は、全世界の国民の「平和のうちに生存する権利」を憲法前文に明記し、「武力の威嚇及び武力の行使」を禁じて戦争を放棄したことに加えて(第9条第1項)、「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を規定した(第9条第2項)。

 世界の平和主義の系譜の先端に位置する徹底した恒久平和主義を基本原理とすることとしたのである。それは、余りにも悲惨な戦争の被害と加害とを経験した日本国民の希望であり、世界に向けて日本は二度と戦争を行わないという不戦の誓いを表明したものであった。同時にそれは、世界が進むべき平和主義の理想を指し示したものでもあった。

 これまで幾度か、憲法を改正して恒久平和主義を捨て去ろうとする政治的動きがある中で、日本は、今日に至るまで恒久平和主義を堅持してきた。それにより、日本は、世界の人々から、戦争をしない国としての信頼を得てきたのである。

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第3 日本国憲法の恒久平和主義の大きな転機

1 安全保障法制の国会提出に至る経緯

 政府が昨年7月に公表した本閣議決定は、①武力攻撃に至らない侵害への対処、②国際社会への平和と安定への一層の貢献(①、②は自衛隊の海外活動を大幅に緩和するもの)、③日本国憲法第9条の下で許容される自衛の措置(集団的自衛権行使容認に係る安全保障法制に関するもの)の3点について述べている。

 本閣議決定を受けて、日米防衛協力のための指針の見直しが行われ、今般、安全保障法制を改変し、自衛隊の海外活動を大幅に緩和する法案が国会に提出された。政府は、現在の通常国会での成立を目指している。

2 安全保障関連法案の特徴-集団的自衛権行使容認と自衛隊の海外での戦争協力支援

(1)日本国憲法第9条の解釈としては、自衛戦争を含めた全ての戦争を放棄したとの見解が有力であるところ、従来の政府見解は、自衛のための実力の行使は認められているとしつつ、それはあくまで、我が国が外国から武力攻撃を受けた場合にこれを排除することに限定していた。すなわち、いわゆる個別的自衛権に限定されるとしていた。その上で、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力を持って阻止する、いわゆる集団的自衛権の行使は認められないとしていた。

 このような専守防衛政策により、自衛隊が海外で武力の行使に至るのに対し歯止めをかけてきたのであり、政府が採用する安全保障法制が憲法違反ではないという理由づけがなされてきたのであった。

 本閣議決定はこれらを変更した。日本に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」にも、必要最小限度の実力を行使し得ることとしたのである。今般の法案は、本閣議決定の実施に法律上の根拠を与えようとするものである。

 しかしながら、これは自国が直接攻撃をされたわけでもないのに武力行使を「自衛のための措置」と称して行うことを認めるものであり、更には「自衛のための措置」であれば国連の軍事的措置への参加も可能にしようとするものである。

(2)また、自衛隊の海外活動を大幅に緩和する法制についての法案は、地理的限定をなくして海外のあらゆる地域の戦闘現場近くまで自衛隊を派遣し、戦争等を遂行する米軍その他の他国軍隊に、弾薬を含む物品の提供や輸送その他の役務の提供等を「支援」として行うことを内容とするものである。これは、外国で戦争をしている他国軍隊への積極的協力であり、他国が行う戦争に日本が参加するに等しい。

 さらに、今般の法案では、平和協力活動の範囲を拡大するとともに「駆け付け警護」その他の任務遂行のための武器使用を認めることを目指しており、また、自衛隊法を改変する法案等により、自衛隊の活動と権限を、他国軍隊の武器等の防護等や在外邦人の救出活動にまで広げるとされている。これらの法案もまた、日本が実質的に戦争に参加し、また、現実の戦闘行為に至る具体的危険を生じさせるなど、自衛隊の海外における武器の使用に道を開くものとなっている。

3 今般の安全保障法制等を改変する法案は恒久平和主義に違反する

 このように、今般の安全保障法制等を改変する法案は、集団的自衛権の行使等を容認するばかりでなく、戦闘中である米軍などの他国軍隊への後方支援として、自衛隊を海外のあらゆる地域へ、しかも戦闘地域にまで派遣し、弾薬等の物品や自衛隊の役務を米軍等に提供することを可能とするものであり、また自衛隊の武器使用権限を拡大するものである。

 他国の軍隊に戦闘地域で弾薬等を補給することは武力行使と一体化した戦争参加とみるべきものであり、相手国からの武力攻撃を受け、武力紛争へと発展する高度の危険を伴う。また、武器の使用権限の拡大も武力紛争のきっかけとなりかねない。いずれにしても、このような状況下で、現場の自衛官は、自らも殺傷されかねない立場に置かれ、また、武器を使用して他国の人々を殺傷する立場に追い込まれかねない。かつての盧溝橋事件などの歴史的事実は、現場での兵士の武器使用は戦争に発展するきっかけとなる危険があることを教えている。そのような歴史の教訓に鑑みると、法案の危険性は極めて重大であると言うべきである。全世界の国民に平和的生存権を認め、「武力の行使」や戦力の保持を禁じ、交戦権を否認している日本国憲法の下で、他国の軍隊の武力行使に協力することは、平和的生存権を侵害する行為であるし、日本国憲法第9条に反する違憲の行為である。

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第4 日本国憲法の立憲主義に対する危機

1 国民への情報提供が不十分な下での安全保障法制等の改変

 昨年7月の本閣議決定の後、これを受けて、安全保障法制等の改変に向けて、日米防衛協力のための指針の見直し作業、更には与党協議が行われた。その上で、今般の安全保障関連法案の提出に至った。しかし、その間、主権者である国民に対しては、十分な情報提供がなく、法案に民意を反映させようとする努力も行われてこなかった。国民は、現在の第189回通常国会が開会された後、安全保障関連法案が国会に提案されてみて初めて、具体的な法律の内容を知ることができたのであった。それまでは、国民は、非公開で行われるトップ会談に関する断片的な報道や、改訂された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の結果が報道されるのを受け止めることしかできなかったのであった。

 国政のあり方を決定する権威と権力を有するのは国民である(国民主権原理)。この国民主権原理が十全に機能するために、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を負う内閣総理大臣、国務大臣及び国会議員は、充実した国民的議論が保障されるように、必要かつ十分な情報を提供し、多様な意見に十分に耳を傾けながら、丁寧に説明する責任があった。そして、防衛政策が、その性質上、日本国憲法の恒久平和主義と抵触する契機を有するものである以上、立法に至る過程は、国民的な議論を踏まえた慎重なものでなければならなかったはずであった。

 しかしながら、政府は、恒久平和主義に違反するとされる安全保障法制等の改変に関する法案が今般国会に提出されるまで、主権者である国民に対し十分な説明を行わないまま、不透明な状況下で、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改訂などの既成事実を積み重ねてきたのである。

2 立憲主義違反は許されない

 このように、日本国憲法の恒久平和主義への抵触が指摘されている重大な問題であるにもかかわらず、それについて十分な説明を行わないまま閣議決定がなされ、それを受け、非公開で政府与党内のみで協議がなされ、また、米国との間で日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改訂が先行し、それらの既成事実を経た上で、憲法改正手続を経ることなく、今国会に法案が提出されている。これは、第9条を改変する行為を、立法により事実上進めようとするものである。このような政府の行為は、立法などあらゆる政治的な行為が憲法に基づいて行われなければならないとする立憲主義に反するものでもあり、到底容認することができない。

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第5 恒久平和主義、基本的人権の保障及び立憲主義の擁護と弁護士会の責任

1 戦前の弁護士会の活動の教訓

 上述のように、現在、日本がこれまで国政の基本にしてきたはずの恒久平和主義、基本的人権の尊重及び立憲主義が重大な危機に瀕している。このときだからこそ、弁護士会は、国民や政府に対して意見を述べ、活動に取り組まなければならない。

 戦前、弁護士の行う人権擁護活動は、個人的な対応に留まり、弁護士会としては必ずしも十分な人権擁護活動は行われていなかった。朝鮮などの植民地支配に始まり、大陸・南洋への侵略がなされ、戦線が拡大してゆくとともに、言論・表現の自由が失われていく中で、弁護士会もまた戦時色に染まっていった。

 1944年には、戦争を遂行する仕組みを国内で確保するための国家総動員体制に組み込まれる形で、大日本弁護士報国会が作られた。

 また、戦時下において、国家主義的な風潮が強まる中で、人々は、個人の権利主張を差し控えるようになり、民事事件は減少していった。刑事事件についても被疑者・被告人を弁護することを敵視する見方が強まった(「日本弁護士連合会五十年史」)。司法は国民生活と縁遠いものとなり、弁護士の活躍も、国民の権利擁護のために十分になされることはなかった。そのような状況の下、多くの人々が、戦争の被害を受け、癒えることのない傷を負ったのであった。

 このような戦前の経験は、平和や人権を守るための活動を積極的に行うことは、弁護士の基本的役割である人々の権利擁護の活動の基盤になるものであることを教えている。弁護士が十分に役割を果たせなかったことが、真摯な反省と痛切な教訓として残った。

2 弁護士会の原点-人権を守り平和な世界を築くこと

 日本国憲法は1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された。基本的人権の保障が憲法上明確に規定されたことに伴い、弁護人依頼権の規定(第34条、第37条第2項)など、憲法典に初めて「弁護士」に関する規定が置かれた。弁護士の職務が、人権の擁護や司法制度にとって不可欠な存在であるとされたのである。

 この弁護士の新たな地位及びその職務を規律するために、1949年5月30日、弁護士法が改正され、弁護士法第1条により新たに「基本的人権を擁護し社会正義を実現する」使命が設けられた(同年6月10日公布・同年9月1日施行。)。

 1950年5月20日、日本弁護士連合会は、第1回定期総会を被爆地である広島市で開催し、そこで次のような平和宣言を発した。

「日本国憲法は世界に率先して戦争を放棄した。われらはこの崇高な精神に徹底して、地上から戦争の害悪を根絶し、各個人が人種国籍を超越し自由平等で且つ恐怖のない平和な世界の実現を期する。右宣言する。」

 この宣言に表れているとおり、戦争を放棄した日本国憲法の恒久平和主義(前文・第9条)を徹底することは、戦後の弁護士会の原点である。それは、戦前において国が戦争への道を推し進めようとしているときに、弁護士会が必ずしも十分な対応ができず、むしろ戦争遂行の体制づくりを推し進めてしまったことへの反省に基づくものであった。

3 立憲主義違反を阻止するのは弁護士及び弁護士会の当然の責務

 弁護士会が負っている「基本的人権を擁護し社会正義を実現する」という使命は、国民からの期待と信頼に基づくものである。憲法をないがしろにすることは、憲法により守られている私たちの人権をないがしろにすることである。

 恒久平和主義に反する立法が行われようとしており、また、それが憲法の本質である立憲主義に反する形でなされようとしている現在、弁護士会がこれについて声を上げなければ、それは弁護士会が役割を放棄することにほかならない。もしそうであれば、弁護士が弁護士としてのふさわしい地位を保持する根拠を失うであろう。

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第6 結論

 当会は、戦後、一貫して、日本国憲法の恒久平和主義を脅かす動きに反対する声を上げてきたところである。

 いま、この時において、私たちは、弁護士及び弁護士会の役割をあらためて自覚する。そして、集団的自衛権の行使等を容認し、自衛隊に海外で他国軍隊の武力行使を支援する活動等を認める今般の安全保障関連法案の成立に強く反対する。そして、それとともに、平和と人権、そして立憲主義を守る活動に国民とともに全力を挙げて取り組むことを宣言するものである。

以上

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