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死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度の存廃についての全社会的議論を求める会長声明

2015.07.15

 本年6月25日,名古屋拘置所において,1名に対して死刑が執行された。これは上川陽子法務大臣による初めての死刑執行であり,第2次安倍内閣発足以降,死刑が執行されたのは,2014年8月以来7回目で,合計12人になる。とりわけ本件は,弁護人が被執行者の控訴の取下げ無効を主張していた事案であり,また再審請求の準備中であった。このような状況下における死刑の執行に対し,当会は死刑執行に抗議するものである。
 日
本弁護士連合会は,2014年11月11日,上川法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度に関する世界の情勢について調査の上,調査結果と議論に基づき,今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
 こ
の点,2014年3月には,静岡地方裁判所は袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在,東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが,もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていたことは明らかであり,この事件は,えん罪の恐ろしさはもちろんのこと,死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。
 さ
らに,死刑の廃止は国際的な趨勢であり,世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが,2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく,日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止,米国の19州は死刑を廃止しており,死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け,国際人権(自由権)規約委員会は,2014年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 当
会は,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃についての全社会的議論を求めるものである。

  2015年(平成27年)7月15日

                   熊本県弁護士会       
会長  馬  場    啓