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死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、 死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明

2015.12.22

 2015年12月18日、東京拘置所において1名、仙台拘置所において1名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による初めての死刑執行であり、第3次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、2015年6月以来8回目で、合わせて14人になる。執行されたうちの1名は、裁判員裁判による死刑判決を受け、弁護人が控訴したものの、控訴を取り下げ死刑が確定した事案であり、死刑判決について上級審での審理を受けずに執行されたことになる。死刑が生命を奪う特別な刑罰であることを考えれば、上級審での審理を必要的なものとすることも検討されるべきである。またもう1名は、1審で認めた後、控訴審で否認に転じ無実を主張した事案であり、審理が尽くされたのか疑いが残る。このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当会は改めて死刑執行に強く抗議する。
 当
会は、去る2015年9月14日、岩城法務大臣に対し、「死刑に関する全社会的議論を呼びかける意見書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
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14年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、その心身に不調を来しており、袴田事件は、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。
 死
刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 当
会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度についての全社会的議論を求めるものである。

  2015年(平成27年)12月22日

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                   熊本県弁護士会
                   会
 長  馬  場    啓