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消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

2016.03.09

 政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」という。)を設置し、政府関係機関の地方移転について検討している。その中で、徳島県から消費者庁と国民生活センターを同県に移転することが提案され、有識者会議で審議されている。
 当会は、消費者庁・国民生活センターを地方移転することは両機関の機能から不適当であると考えるので反対である。
 有識者会議においては、「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」や「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」にかかる提案、「移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案」は検討対象としない方向性が示されている。この考え方は妥当であり、典型的に自己完結的な業務を担うような機関は移転に適しているといえよう。
 しかし、消費者問題は、多数の省庁に分散して担われているという特徴があり、消費者庁はその司令塔として創設された経緯があり、また重大事故の発生時には、官邸と連絡を取りながら、関係大臣等を本部員とする緊急対策本部を速やかに開催し、関係省庁と連携して事態に対処しなければならない。各方面から即時の被害情報収集、マスコミ等対応を含め、消費者の安全のための施策を適切に行う必要がある。実際に、メニュー表示偽装問題では、内閣官房長官の下で、また冷凍食品農薬検出事案においては担当大臣の下で、関係省庁と連携しその司令塔となって速やかに対応している。
 また、消費者庁は、消費者基本計画でも確認されているとおり、日常的にも、官邸や他府省庁と連絡・調整して政府全体の消費者政策の司令塔機能を果たしている。そのため、常に関係省庁との協議等が必要である。さらに、消費者庁は消費者法の整備を行う責務があり、新規立法や法改正の作業が頻繁に行われているが、消費者法は多数省庁所管分野と関係するため関係省庁との協議が不可欠である。
 このように、消費者庁は、各省庁に関わる消費者問題について、政府全体として一元的に推進するという性格をもつ。
さらに、国民生活センターは、消費者基本法第25条に定められた消費者行政の中核的実施機関として、消費者庁と連携して、諸問題を検討して関係省庁に意見を述べ、地方消費者行政を支援し、消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行っている。その役割を果たすためには、各省庁に近接し日常的に連携できる場所にある必要がある。
 以上からすれば、消費者庁・国民生活センターは、関係省庁等と緊密な連携の下に消費者行政を推進すべきであり、それらの地方移転は機能上から不適当であるから移転の対象とすべきではない。

                2016(平成28)年3月9日
                熊本県弁護士会 会長 馬 場  啓