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死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度についての全社会的議論を求める会長声明

2016.03.29

 平成28年3月25日、大阪拘置所及び福岡拘置所において各1名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による2度目の執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、9回目で、合わせて16人になる。
 当会は、2015年9月14日、岩城法務大臣に対し、「死刑に関する全社会的議論を呼びかける意見書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求め、その後も死刑執行に抗議する声明を出していた。
 このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当会は改めて死刑執行に強く抗議する。
 2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第2次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、現在でもその心身に不調を来している。誤判・えん罪の危険性は現実的なものであり、誤って死刑を執行するおそれは否定できない。
 死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。
                  2016年(平成28年)3月29日
                  熊本県弁護士会
                  会 長  馬 場   啓