生活保護基準の引下げを行わないよう強く求める会長声明
厚生労働省は、2017年12月8日の第35回社会保障審議会生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)において、2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を引き下げる案を示した。
また、同案によれば、これ以外にも、3歳未満の児童養育加算が削減され、学習支援費が廃止される可能性がある。
2004年からの老齢加算の段階的廃止、2013年からの生活扶助基準の引下げ、2015年からの住宅扶助基準の引下げや冬季加算の削減に引き続くもので、特に、子どものいる世帯と高齢世帯が大きな影響を受ける。
その後、同省は、同月22日、生活扶助について、受給世帯全体の約67%の世帯で減額となること、減額幅を最大5%とすることを発表した。
今回の引下げの考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
しかし、厚生労働省が公表した資料によっても、生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合)が2割ないし3割程度と推測され、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在する。この層を比較対象とすれば、今後も生活保護基準を引き下げ続けることを認めることになり、合理性がないことが明らかである。また、基準部会報告書(2017年12月14日付け)も、子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。
いうまでもなく、生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化する基準であり、最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険の保険料・利用料や地方税の非課税基準等の労働・教育・福祉・税制などの多様な施策の適用基準と連動している。
生活保護基準の引下げは、生活保護利用者の生活を追い詰めるだけでなく、市民生活全般に悪影響をもたらしかねないものであり、容認できない。
よって、当会は、更なる生活保護基準の引下げを行わないよう強く求めるものである。
熊本県弁護士会
会 長 宮 田 房 之