死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2017年12月19日,東京拘置所において2名の男性に対して死刑が執行された。上川陽子法務大臣による死刑執行であり,第2次安倍政権発足以降で死刑が執行されたのは,12回目で合計21名となった。
当会は,2015年9月14日,上川法務大臣に対し,「死刑に関する全社会的議論を呼びかける意見書」を提出して,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止すること等を求め,その後も死刑執行に抗議する声明を出してきた。
また,日本弁護士連合会は,2016年10月の福井人権大会において,2020年までに死刑制度の廃止を目指す「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を賛成多数で決議している。
このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり,当会は改めて死刑執行に強く抗議する。
2014年3月,静岡地方裁判所が袴田巖氏の第2次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在,東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが,もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが,現在でもその心身に不調を来している。誤判・えん罪の危険性は現実的なものであり,誤って死刑を執行するおそれは否定できない。今回,死刑執行された者はいずれも再審請求中であり,この点についても強く抗議する。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり,2016年末時点で,世界で死刑を廃止又は停止している国は141か国に上り,死刑を存置している国は57か国である。2016年に実際に死刑を執行した国は更に少なく,日本を含め23か国であった。国際人権(自由権)規約委員会は,2014年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
当会は,これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,改めて死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。
熊本県弁護士会
会 長 宮 田 房 之