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熊本地震から2年を迎えての被災者復興支援継続に関する会長声明

2018.04.13

 本年4月14日と16日で熊本地震から2年を迎え、仮設住宅の第一次入居期限が到来しようとしている。
 熊本市内の繁華街だけを見れば震災以前と変わらぬ賑わいをほぼ取り戻しており、公費解体の進捗率が99%を超えている状況を併せて考えると、被災「地」の復旧復興は順調に進んでいるようにも思える。
 しかしながら、被災「者」の生活再建という目線から見た場合、復興が遅々として進んでいないという厳しい現実を直視しなければならない。この現実は、仮設住宅等の入居者数の推移からも明らかである。熊本県が公表している平成29年5月31日時点での仮設住宅等の入居者の合計(建設型・借上型・公営住宅等の入居者合計)は、4万7800人(統計上最大値)であるのに対し、平成30年3月31日時点での入居者数の合計は、3万9396人であり、この10か月間で自立再建を果たした被災者は、僅か17%に過ぎない。
 当会は、震災直後から現在まで、約1万4000件にのぼる電話及び面談による無料相談を実施し、被災者一人ひとりの被災状況・生活状況に応じた個別の自立再建支援に取り組んできた。
 そして、これまで遂行してきた支援活動を今後も継続していく所存であるが、この震災から2年の節目に、日弁連が掲げている「人間の復興」という理念を踏襲し、以下のとおり、当会の決意を表明する。

1 無料相談の継続実施
 当会は、電話又は面談による震災に関する各種相談を無料で行っているが、今後も継続実施することにより、被災者への情報提供及び助言活動を続けていく。

2 各自治体との協力協定の推進
 当会は、平成29年11月6日、南阿蘇村との間において、相談会やケースカンファレンスの実施、その他被災者の住まい再建に関して弁護士を派遣することを内容とする協定(「被災者の住まい再建に関する協力協定」)を締結し、同年11月から12月にかけて、南阿蘇村の約250世帯の世帯別ヒアリング支援を行った。
 被災者の自立再建の障害となっている課題は、一度の相談で一挙に解決するものは少なく、むしろ複合的・重層的課題であることが殆どであることが通常である。被災者一人ひとりの被災状況・生活状況に応じた個別の自立再建を支援していく(「災害ケースマネジメント」)ために、南阿蘇村と同じ内容の協定を各自治体との間で積極的に締結することを推進していく。

3 自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)の更なる周知
 現時点(平成30年4月6日時点)で、自然災害債務整理ガイドラインの受付件数は715件であり、そのうち213件が成立し、被災ローンの減免を果たしている。特に、自宅の再建(新築・購入・修繕)を望む被災者に対しては、この制度の活用を促し、二重ローン問題を解消することにより自立再建の足がかりとなるよう尽力する。

4 熊本県及び各市町村に対する要請
 (1) 仮設住宅等の入居期限の延長に関し、熊本県は8つの「特別基準(延長の対象となる条件)」を設け、各市町村もこの「特別基準」を基に延長の可否を判断しているものと思われる。しかしながら、被災者の自立再建の障害となっている課題は、8つの条件に該当しないものも多く含まれており、一律にこの「特別基準」により延長の可否を判断することは、かえって被災者の自立再建を阻害する原因となるおそれがある。
 熊本県に対しては、この「特別基準」の緩和を求めるとともに、各市町村に対しては、被災者一人ひとりの個別事情に応じた自立再建支援を行うよう要請する。
 (2) 賃貸住宅での自立再建を望む被災者(特に独居高齢者・障がい者・生活困窮者)の自立再建の大きな壁となっている「連帯保証人不在」問題に対し、現在、熊本市社会福祉協議会が行っている「住宅確保要配慮者支援事業(賃貸住宅契約時に求められる保証を社会福祉協議会が行い、入居時から退去時までの包括的かつ継続的な支援を行う事業)」を参考に、各市町村が独自の支援制度を設けるよう要請する。
 (3) 災害公営住宅での自立再建を望む被災者(特に、被災時に賃貸住宅に居住し、現在、仮設住宅に入居している被災者)に対し、当該賃貸住宅の解体を入居要件としている自治体が複数存在する。解体するかどうかは、賃貸人の意思にかかっており、被災者が自己決定できない事由を入居要件とすることは不合理である。当会は、平成30年3月30日付けで、熊本県内の各市町村に対し、「災害公営住宅入居資格に関する要請及び照会書」を送付し、当会の見解を表明したところである。
 各市町村に対して、被災時賃借していた住宅に居住しており、現在、仮設住宅に入居している被災者については、その罹災証明の判定、解体の有無にかかわらず、災害公営住宅の入居資格を認めること、仮に、現在の資格が解体を要することが要件となっている場合、その入居資格を変更するよう要請する。
 (4) 現行の公的支援制度の枠組から抜け落ち、壊れたままの自宅で喘ぎ苦しみながら生活している被災者(「在宅被災者」)に対し、各市町村は、使途を定めず配分された「復興基金」を有効に活用し、罹災証明の判定に縛られず、被災者一人ひとりの実情を個別に判断し、修繕費の給付等その実情に適合した独自支援を行うよう要請する。

2018年(平成30年)4月13日
熊本県弁護士会
会長 猿 渡 健 司