熊本地震から3年を迎えての被災者復興支援継続に関する会長声明
1 はじめに
? 本年4月14日と16日で,熊本地震発生から3年を迎え,仮設住宅の最終入居期限が到来しようとしている。
県内各所で,災害公営住宅の建設が急ピッチで行われているニュースを耳にすることが増え,被災「地」の復旧復興は着実に進んでいるようにも思える。
しかしながら,いまだに熊本県内で7304戸,1万6519名が仮設住宅(建設型・借上型・公営住宅の全てを含む。以下同じ。)での避難生活を余儀なくされている(平成31年4月11日現在)。
当会は,震災発生直後から,法律相談をはじめとする被災「者」の復興支援の活動を継続し現在に至っているが,これからも,被災者一人ひとりに寄り添った支援活動を続けていく所存である。
2 喫緊の課題と支援策について
来月から,仮設住宅の最終入居期限が順次到来することとなっているが,前述のとおり,いまだに約1万6000名を超える被災者が,自立再建を果たせぬまま避難生活を続けている。
自立再建を果たせない理由は,経済上の問題,年齢や健康上の問題等被災者一人ひとりによって異なっており,熊本県及び各市町村に対しては,被災者一人ひとりに応じた支援策を講ずるよう要請する。具体的には,被災者各人からのヒアリングを行った上で,仮設住宅の入居期限の更なる延長,借上型仮設住宅として提供された住宅の本来の家賃を支払えない被災者に対しては,災害公営住宅の家賃との差額を補助する制度の創設等を検討するよう要請する。
当会としては,自宅の再建(新築・購入・修繕)を望む被災者に対して,自然債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)の活用を促し,二重ローン問題を解消することにより,自立再建を促進する手助けを続けていく所存である。なお,平成31年4月5日時点での成立件数は307件である。
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3 取り残された課題と支援策について
現行法制度のもとでは,「全壊」あるいは「大規模半壊」の被害認定を受けた住家が生活再建支援金をはじめとする被災者支援制度を享受できる一方で,「半壊」の認定しか受けられなかった住家については,建物を解体する場合を除き,支援制度の枠組から抜け落ちることとなる。しかし,「半壊」の認定を受けた住家の中には,一見して住み続けることが困難な被害を受けている場合も珍しくはなく,そのような住家に住み続けている被災者(いわゆる「在宅被災者」)については,その実数及び被害実態は不明のままである。
本年になって,国(総務省行政評価局)による実態調査が始まってはいるが,熊本県及び各市町村に対しては,在宅被災者の支援を急務の課題として認識し,修繕費の給付等その実情に応じた独自支援策を検討するよう要請する。
当会としては,日弁連と一体となって,国に対して,より段階的な被害認定の仕組みの構築及び各段階に応じた適切な額の支援金の支給等を内容とする立法の提言を行っていく所存である。
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4 これからの支援のあり方について
被災者支援に関わる行政・民間団体・個人がバラバラに活動していては,被災者一人ひとりの個別事情に応じた支援を成し遂げることは困難であり,それぞれの持つノウハウを共有し,連携し一致団結して,被災者支援に取り組む必要がある(「災害ケースマネジメント」の手法による被災者支援)。
当会としては,各種専門士業(弁護士・司法書士・不動産鑑定士・公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士・土地家屋調査士・中小企業診断士・技術士・建築士・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・歯科衛生士等々)のみならず,医師・歯科医師・看護師,社会福祉協議会,民間ボランティア団体等が連携し被災者支援にあたる「連絡会」の設立を模索しており,熊本県及び市町村に対しては,「地域支え合いセンター」を通じて,この「連絡会」との連携協働を図る仕組み作りに協力して頂くことを要請する。
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5 最後に
当会は,熊本地震から3年を経過する日を迎えるにあたり,改めて被災者一人ひとりが「人間の復興」を成し遂げられるよう支援活動を行うことを誓い,それと共に,被災者支援の活動を続けている別の団体・関係機関との連携を強固にすることで,将来に向かって息の長い被災者支援活動を継続していく所存である。
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2019年(平成31年)4月12日
熊本県弁護士会
会 長 清 水 谷 洋 樹