死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
本日、福岡拘置所において1名の死刑が執行された。2019年10月の就任以降、森まさこ法務大臣による初の執行であり、第2次以降の安倍内閣において、死刑の執行は17回目で、執行人数は合わせて39名となる。
当会は、2015年9月14日、上川法務大臣に対し、「死刑に関する全社会的議論を呼びかける意見書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求め、その後も死刑執行に抗議する声明を出してきた。
また、日本弁護士連合会は、2016年10月の福井人権大会において、2020年までに死刑制度の廃止を目指す「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を賛成多数で決議している。
このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当会は改めて死刑執行に強く抗議する。
2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第2次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。同決定は、東京高等裁判所で取り消されたものの特別抗告審にて係属中であるが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、現在でもその心身に不調を来している。誤判・えん罪の危険性は現実的なものであり、誤って死刑を執行するおそれは否定できない。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり、2016年末時点で、世界で死刑を廃止又は停止している国は141か国に上り、死刑を存置している国は57か国である。2016年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め23か国であった。国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。
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2019年(令和元年)12月27日
熊本県弁護士会
会長 清水谷洋樹