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第66期司法修習生給費制廃止違憲熊本訴訟上告棄却決定に関する会長声明

2020.10.15

 令和2年10月13日,最高裁判所第三小法廷(林景一裁判長)は,第66期司法修習終了者49名が,国が平成16年に「司法修習生は,その修習期間中,国庫から一定額の給与を受ける」と規定する裁判所法67条2項本文を改正し,平成23年11月以降採用の司法修習生について給与を支払わなくなったこと(給費制廃止)は違憲であると訴えた第66期司法修習生給費制廃止違憲熊本訴訟(以下「本件訴訟」という。)の上告審において,その訴えを退ける決定をくだした。
 当会は,本件訴訟提訴時において当会会員の過半数139名が第66期司法修習終了者の代理人となり,また,7名の当会の現会長,元会長が本件訴訟の口頭弁論期日において給費制の意義等について意見陳述するなど,本件訴訟を支援してきたところであり,最高裁判所が何ら憲法判断を示すことなく訴えを退けたことは,甚だ遺憾である。
 当会は,司法修習制度はわが国の司法制度を支える重要な社会的基盤であり,これを支える費用を負担することは国の当然の責務であるとの考えのもと,給費制廃止に関しては,平成22年5月25日開催の通常総会において「司法修習生の給費制の維持を求める緊急決議」を採択するなど,給費制維持のために尽力してきた。
 また,給費制廃止後の平成29年に再度裁判所法が改正され,同年11月以降採用の司法修習生に対して修習給付金が支給されるようになったこと(修習給付金制度創設)により,制度の狭間で給費又は修習給付金を受けることができなかった司法修習終了者,いわゆる「谷間世代」が生じたという不公平・不平等に関しては,平成30年3月19日付けで「『谷間世代』の不公平・不平等の速やかな是正を求める会長声明」を発表するなど,不公平・不平等を是正すべく尽力してきた。
 名古屋高等裁判所が,本件訴訟と同種訴訟の判決(令和元年5月30日)において,「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については,決して軽視されてはならない」,「谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは,立法政策として十分考慮に値する」と付言しているとおり,司法修習生に対する経済的支援及び谷間世代の救済は,司法のみならず,立法,行政の課題でもある。
 本件訴訟は残念な結果に終わったが,当会は,引き続き,司法修習生が経済的な不安を持たずに司法修習に専念することができるような制度を求め,また,谷間世代の不公平・不平等の是正を求め,尽力していく決意である。

2020(令和2)年10月15日
熊本県弁護士会
会長 鹿瀬島 正剛