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生活保護世帯が受給する令和2年7月豪雨における義援金等の収入認定に関する会長声明

2020.10.16

  1. 令和2年7月豪雨では、多くの人々が被災しており、生活保護受給者(以下「被保護者」という。)も例外ではない。このような状況の下、被災者に対する義援金の第一次配分が決定し、その支給が進みつつある。
  2. 災害時の義援金、災害弔慰金等(以下「義援金等」という。)に関しては、東日本大震災、平成28年熊本地震の際、一部自治体において義援金等を収入認定して生活保護の打ち切りがなされた事例が発生した。
  3. そもそも、義援金等は、被災者の生活基盤の回復に利用すること、被災したこと自体に対する慰謝や弔慰を趣旨として支給されるものであって、本来、その全額が収入認定になじまないものないし自立更生にあてられるべきものである。
  4. この点、生活保護制度の運用について定めた厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号、以下「次官通知」という。)は、「社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く)から被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないもの」や「災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」については、収入認定しないことを定めている。また、自立更生の具体的内容について、生活保護担当職員の手引書である「生活保護手帳」は、生活基盤の回復に要する経費や治療費のほか、生業の開始・継続費用や技能習得費、介護費、就学・結婚・弔慰等様々な費目が自立更生の内容に含まれることを認めている。
     しかし、この点が被保護者や関係者に周知されなければ、生活保護を受給する被災者が義援金等の受領を躊躇することとなりかねないため、かかる通知の内容を十分に周知することが必要である。
  5. よって、当会は、令和2年7月豪雨について、国に対し、次官通知の内容を改めて周知徹底するよう求めるとともに、関係各自治体に対し、被災者が安心して義援金等を受領できるよう、被災者に対してもこれを十分に周知することを求める。
    以 上

    2020(令和2)年10月16日
    熊本県弁護士会
    会 長  鹿瀬島 正 剛