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「「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」の適用開始から1年を迎えての会長声明

2021.12.01

1 2020年(令和2年)始めから全世界に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症に関しては、その影響を受けたことによって債務の弁済が困難となった個人債務者の生活や事業の再建を支援することを目的として、同年121日、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下「自然災害債務整理ガイドライン」という。)を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則(以下「本特則」という。)が適用開始となり、本日で適用開始後1年を迎えることになった。
 全国における登録支援専門家委嘱件数は、2021年(令和3年)9月末現在で1391件となり、当会においても、同年1129日現在で59件の委嘱依頼を受けている。このうち、当会に委嘱依頼を受けたものだけでも既に5件で債務整理が成立しており、コロナ禍に苦しむ個人債務者の生活及び事業の再建に一定の役割を果たしている。
2 自然災害債務整理ガイドラインの適用開始から2週間後に発災した平成28年熊本地震(以下「熊本地震」という。)においては、同ガイドラインに基づいて、当会において759件の委嘱依頼を受け付け、このうち既に376件について同ガイドラインに基づく債務整理が成立している。また,令和27月豪雨においても,同ガイドラインに基づいて,当会において32件の委嘱依頼を受け付け、このうち既に6件について同ガイドラインに基づく債務整理が成立している。
 実務運用が固まっていない段階から、これだけの案件の対応に尽力された金融機関等や一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関など、関係各位に敬意を表する。
3 本特則は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた個人債務者の債務整理に関する準則であるが、熊本地震時とは異なる様々な課題も生じてきている。
 すなわち、新型コロナウイルス感染症による影響を受けていることを証する公的書類がないこと等から、対象債権者・対象債務者間での合意形成が困難な事案や、コロナ禍が予想以上に長期化していることから、本特則が対象とする期間内の債務以外の債務が増加することで本特則の利用を断念せざるを得ない事案など、債務整理の成立が困難な事案がある。
 本特則の様々な課題については、本特則がその目的である個人債務者の生活や事業の再建を実現する手段として有効、適切に運用されるように、改善がなされていくことが求められる。
4 当会は、熊本地震及び令和27月豪雨時の経験を活かし、コロナ禍の影響を受けた個人債務者の生活や事業の再建に向けて、本特則のよりよい運用の実現に今後も引き続き取り組んでいく所存である。


2021年(令和3年)12月1日
熊本県弁護士会
会長 原 彰宏