令和4年の憲法記念日を迎えての会長談話
1 人間は不完全な存在です。どんなに優れた人でも全知全能ではありえません。不完全な人間により作られた社会も、法律も、完全無欠のものとはなり得ません。
ひとりひとりの人間が不完全な存在だからこそ、多くの人の知恵を合わせる必要があります。そのためには、多様な意見を尊重し、議論を戦わせなくてはなりません。また、過去の人類の成功と失敗の積み重ねである歴史を学び、その記録を大事にします。そして、長年の伝統や習慣には先人たちの知識や経験が詰まっていると考え、これらを尊重する立場につながります。
2 本日は、日本国憲法が施行されてから75年目の憲法記念日です。日本国憲法は、軍事で国を作ったわが国が、侵略戦争に至り、ついには軍事で国を滅ぼしたことに対する痛切な反省から生まれ、我が国の国民に受け入れられました。まさに、日本国憲法は、人類が過去の歴史から学び得たことの結晶というべきものです。
そして、世界中を見渡せば国際紛争の絶えない中、わが国が、日本国憲法のもとで、既に75年の長きにわたって平和を享受していることも尊重すべき事実です。
3 わが国を含む世界は、いまだ、新型コロナウイルス感染症による脅威にさらされています。しかし、感染拡大防止の名のもとに過剰な人権制約がなされてはなりません。また、感染者や医療従事者などに対する偏見や差別は認められません。
今年2月には、国連安保理の常任理事国で、核兵器保有国でもあるロシア連邦がウクライナに対する軍事侵攻を開始しました。ロシア連邦の行為は重大な国際法違反であり、最大級の人権侵害であって、決して認められるものではありません。だからといって、我が国に居住するロシア人等に対する言われなき差別や偏見も認められません。
また、私たちは、今回のロシア連邦による軍事侵攻がもたらした悲惨な現実についての報道を目にするたびに、胸を痛めざるを得ません。日本国政府には、憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とあるとおり、平和を維持するための、国際社会における平和的手段による貢献がなお一層求められています。
こうしたことがらに鑑みても、日本国憲法の、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三大原則は、今もますます輝きを増しています。
4 現在を生きる私たちの選択は、いずれ将来の日本にとっての歴史となります。
当会は、現在の私たちの選択が、今なお輝きを増している日本国憲法の理念をさらに進めるものとして将来の日本に引き継がれることを願うとともに、日本国憲法の理念を率先して実現すべくなお一層の取り組みを誓うものです。
会長 福岡聰一郎