熊弁の意見

  1. ホーム
  2. 熊弁の意見
  3. イスラエル及びハマス等パレスチナ武装勢力双方に対して直ちに戦闘終結を求めるとともに、日本政府に対して恒久的平和に向けた働きかけを求める会長声明

イスラエル及びハマス等パレスチナ武装勢力双方に対して直ちに戦闘終結を求めるとともに、日本政府に対して恒久的平和に向けた働きかけを求める会長声明

2024.07.10

1 2023年10月7日、ガザ地区を拠点とするハマス等パレスチナ武装勢力(以下「ハマス等」という。)は、イスラエル南部を攻撃し、イスラエル当局によると、これによって約1200人が殺害され、251人が人質にされた。これを受け、イスラエルがガザ地区に対する大規模な報復攻撃を開始し、ハマス等との戦闘状態が継続している。
2 国連が2024年5月13日に公表したところによれば、イスラエルとハマスの戦闘によるガザ地区の死者は3万5000人を超え、完全に身元が確認されたとする死者2万4686人のうち子供が7797人、女性が4959人、高齢者が1924人としている。
3 国連人権高等弁務官事務所は、2024年6月19日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでの軍事作戦で、戦争法規の基本原則に繰り返し違反し、民間人と戦闘員を区別していなかった可能性があるとの報告書を取りまとめ、その報告書では(イスラエル軍は)攻撃の際、区別の原則[1]、均衡性の原則[2]、予防の原則[3]に組織的に違反した可能性があるとしている。 
 また、国連人権理事会の調査委員会は、2024年6月12日、去年末までのイスラエルとハマスの戦闘についての調査結果をまとめ、報告書を公表し、その報告書では、イスラエル軍については、ガザ地区で食料不足を引き起こし、戦争の手段として飢餓を用いたほか、民間人や民間施設を意図的に攻撃したり、強制的に住民を退避させたりしたとされているところ、これらイスラエル軍の行為は、区別原則等を定めるジュネーヴ諸条約第1追加議定書等の国際人道法に違反するだけでなく、戦争犯罪(国際刑事裁判所に関するローマ規程第8条第2項)や人道に対する犯罪(同第7条)にも該当し、いわゆるジェノサイド(同第6条、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約第2条)に該当するおそれもある。他方、ハマス側については、イスラエルの越境攻撃で民間人を意図的に攻撃して殺害し、子どもを含め人質にとったことなどが、戦争犯罪に当たるとしている。
4 日本国憲法は徹底した恒久平和主義に立脚し、その前文において「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と謳っている。イスラエル及びハマス等双方の前記各行為を傍観することは、日本国憲法の精神に反するものであり、平和の維持に努めるべき国際社会の一員の行動として断じて許されるものではない。
 特に、イスラエルの攻撃は、ガザ地区に居住する子ども・女性の生命・身体を侵害するものであり、看過できない国際人道法違反の行為である。
 日本政府は、先に述べた日本国憲法の精神に則り、イスラエルに対しては軍事攻撃の即時停止を呼び掛けるとともに、ハマス等に対しては人質の即時解放を求め、イスラエル及びハマス等が戦闘終結に至ることで平和を実現させるための働きかけをしなければならない。
 当会は、イスラエル及びハマス等双方に対して、直ちに戦闘終結、人質の解放及び国際法の遵守を求めるとともに、日本政府に対して、国際社会と連携し双方に対して恒久的平和を実現するための働きかけを行うことに全力を尽くすことを求める。
2024(令和6)年7月10日
熊本県弁護士会
会 長 河津典和


[1] 区別原則:軍事目標と文民又は民用物を区別し、軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない。
[2] 均衡性の原則:巻き添えによる文民や民用物の被害を過度に引き起こすことが予測される攻撃をしてはならない。
[3] 予防原則:文民と民用物への被害を最小限に抑えるための予防措置をとらなければならない。