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福岡高裁判決を受け、早急に、同性間の婚姻制度の実現を求める会長声明

2025.02.13

1 同性間の婚姻ができない現在の婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定(以下、「本件諸規定」という)の違憲性を問う一連の訴訟は全国5箇所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡。なお、東京では一次と二次の2つの訴訟が行われている。)で争われているところ、原告に熊本市内在住の男性カップルも含む福岡での訴訟につき、令和6年12月13日、福岡高等裁判所にて判決(以下、「福岡高裁判決」という)が言い渡された。
 一連の訴訟においては、同年3月14日に札幌高裁、同年10月30日に東京高裁でそれぞれ判決が言い渡されており、福岡高裁判決は、3件目の高裁判決となる。
 いずれの高裁判決も本件諸規定の違憲性を判示するものではあったが、福岡高裁判決は、以下に述べるとおり、本件諸規定について憲法13条違反を初めて認めたこと及び違憲状態は婚姻でない別制度を設けるという選択肢では解消されないことを明確に述べた点で画期的かつ極めて重要な意義を有する。

2 福岡高裁判決は、一連の訴訟の判決において初めて本件諸規定について憲法13条違反を認めた。すなわち、同判決は、幸福追求権としての婚姻の成立及び維持について法的な保護を受ける権利は、男女のカップルも、同性のカップルもいずれも等しく有しているにもかかわらず、両当事者が同性である場合の婚姻について法制度を設けず法的な保護を与えないことは制約の程度が重大である一方、制約の必要性や合理性も見出しがたいことから、本件諸規定のうち同性のカップルを婚姻制度の対象外とする部分を、同性の者を伴侶として選択する者の幸福追求権を侵害するものとして、憲法13条に違反するものとした。
 また、同判決は、本件諸規定のうち同性のカップルを婚姻制度の対象外とする部分は、法の下の平等を定めた憲法14条1項や、婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定させるべき旨を定める憲法24条1項にも違反するとした。
 さらに同判決は、登録パートナーシップ制度などといった婚姻でない別制度について、「幸福追求権としての婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利は、男女のカップル、同性のカップルのいずれも等しく有していると解されるから、同性カップルについて法的な婚姻制度の利用を認めないことによる不平等は、パートナーシップ制度の拡充又はヨーロッパ諸国にみられる登録パートナーシップ制度の導入によって解消されるものではなく(中略)、同性のカップルに対し、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と述べ、明確にこれを否定し、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ違憲状態は解消されないとした。

3 このように本件諸規定についての違憲判決が続く中、国会においては、首相や法務大臣等の閣僚に対して、同性婚法制化について度々、質問がなされ、また、同性婚を実現するための民法改正案(婚姻平等法案)も2度提出されているがいずれも審議されないまま廃案となっている。
 しかしながら、福岡高裁判決が、現時点での立法不作為による国家賠償責任は否定しつつも、「本件立法不作為すなわち本件諸規定を改廃等しないことは、国家賠償法上の責任を生じさせ得るものである」として、国による立法行為を強く促していることからも、これまでのような立法・施策の懈怠は、もはや許されない。

4 当会は、令和3年5月25日の「いわゆる同性婚訴訟の札幌地裁判決を受け、早期の法律改正を求める会長声明」、令和5年3月8日の「内閣総理大臣秘書官による差別発言に抗議し、改めて、法律上の性別が同じ者の婚姻を可能とする早期の法律改正を求める会長声明」、同年7月19日の「名古屋地裁判決及び福岡地裁判決を受け、直ちに同性間の婚姻制度の実現を求める会長声明」において、同性間の婚姻が可能となる法律改正に着手することを求めてきた。
 会長声明が3度も出される中、同性の者を伴侶として選択する者の人権が侵害され続けている現状は、直ちに改められなければならない。当会は、同性間の婚姻を可能とする法制度を早急に整備することを重ねて求める。

2025年(令和7年)年2月12日
熊本県弁護士会
会 長  河 津 典 和