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熊本地震から1年を迎えての被災者復興支援継続に関する会長声明

2017.04.14

 本日,熊本地震から1年を迎える。後に「前震」「本震」と名付けられた二度にわたる震度7の地震は,私たちの郷土とそこに暮らす人々をズタズタに傷つけ,現在もまだ余震が続いている。
 当会は,震災直後の混乱の中,正確で信頼できる情報を提供することで被災者の不安を軽減するため,本震5日後に情報誌「くま弁ニュース」を3万部発行して被災地へ届け,9日後から「無料電話相談」,5月の連休明けから被災地での「無料面談相談」を開始した。日弁連及び全国の弁護士会の協力を得て,現在も震災相談対応を続けているが,相談件数は計1万2000件を超えたにも拘わらず終息する兆しは見られない。
 時間の経過とともにニーズは変化し多様化しているが,一人ひとりの被災者から寄せられる生の声はどれも切実で一刻の猶予も感じられないものばかりである。当会は,こうした声に真摯に耳を傾け,関係各機関と協力しつつ,解決への支援を行ってきた。県選出国会議員等への陳情を行い,その尽力により早期に義援金差押禁止法案の成立等一定の成果を得たほか,本年1月27日には益城町にその協力を得て被災者復興支援の拠点となる法律相談センターを常設した。当会は,今後も震災対応を継続していく所存であるが,課題は今なお山積している。
 この震災から1年の節目に,日弁連の掲げる「人間の復興」という理念を踏襲し,以下の5点に取り組むことを表明したい。

 第1に,熊本地震で運用が開始された「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(被災ローン減免制度)」のさらなる周知徹底を図り,二重ローン問題等で苦しむ被災者がこの制度を活用することにより,生活再建の足がかりとなるよう尽力する。

 第2に,「震災ADR(裁判外紛争解決手続)」の利用を積極的に呼びかけ,隣人関係や経済的理由等で裁判を望まない被災者が解決を諦めることを防ぎ,早期円満解決の仲介役となるよう尽力する。

 第3に,熊本地震では,被災者が孤立化しやすい「みなし仮設住宅」への入居者が1万2000世帯を超えていることを考慮し,仮設住宅での「孤独死」という痛ましい事実が既に発生したことを重く受け止め,行政(生活支援相談員)のみならず,民間のボランティア団体とも連携協働を図り,「地域支え合いセンター」との連携協働により,被災者の見守りに尽力する。熊本県に対しては,これらの見守り活動が十分に行えるよう,「復興基金」を活用した十分な経済的支援(予算措置)を行うことを求める。

 第4に,熊本地震の犠牲者の数は,「関連死」が直接死の3倍を超え,日々増え続けている。この「関連死」に関して,犠牲者の遺族への災害弔慰金の不支給決定通知書に具体的理由を明記していない事例が明らかとなっている。本年3月16日付の日弁連の意見書でも指摘されているとおり,判断の適正さを担保し,遺族の不服申立ての便宜に資するため具体的な事実関係を示す必要がある。該当する市町村に助言あるいは勧告等で働き掛けるなどし,全市町村において適正で等しい運用がなされるよう尽力する。

 第5に,現行の災害救助法や被災者生活再建支援法等の支援制度を抜本的に見直し,新たな生活再建支援制度の創設に向けて,日弁連や日本災害復興学会等の関係各機関と連携協力する。熊本地震では交付申請数が20万件を超える住家被害認定(罹災証明書)が被災者の生活再建の足かせとなっている。これは,現行の支援制度の枠組みが,罹災証明書の区分に過度に依存していることが大きな要因である。本来,家の壊れ方だけで,支援の内容を決定することには限界があるのであって,被災者一人ひとりの実情を個別に判断し,その実情に適合した個別支援を行う制度への改正を図るべきである。
 震災からの復興に尽力する関係者・関係各団体と協力しつつ,当会は,以上の課題に対応し,被災者の復興支援に努める所存である。

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                   2017年(平成29年)4月14日
                           熊 本 県 弁 護 士 会
                        会 長 ? ?宮 田 房 之