亡母が借金を肩代わり(熊本日日新聞 2013年7月6日付)
2013.07.06
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 母の遺産相続で、遺産は銀行預金1000万円だけです。相続人は私のほかは父(夫)と弟で、遺言はありません。ただ、10年以上前に、弟の借金300万円を母が肩代わりしました。それはどうなりますか。
A 借金の肩代わりをしたお母様には、弟さんに300万円に利息を付けて返還請求できる求償権がありました。しかし、10年経過で時効になっています。また、お母様は長期間に渡り返済請求をしていないようなので、求償権を放棄したと言えます。弟さんが自分から返還しないのであれば、生前贈与と認められ、あとは「特別受益」の問題です。
特別受益とは、共同相続人の一人が、被相続人から、生前に一定の財産を無償でもらう生前贈与を受けた場合、遺産分割で考慮することで共同相続人間の公平を図る制度です。ただ、親には子どもに対する扶養義務がありますので、その範囲内のものは特別受益になりません。
ご相談のケースでは、金額的にも特別受益と評価できます。ただし、贈与後の利息は加算できません。よって、300万円を加えた1300万円を「みなし相続財産」として法定相続分で分けます。お父様(夫)が2分の1で650万円、子どもたちはそれぞれ4分の1で325万円ずつですが、弟さんは、生前贈与分300万円を引いた差額の25万円が実際の相続分になります。
特別受益にはいろいろなケースや、さまざまな法律上の問題がありますので、弁護士に相談してください。
弁護士 内川 寛