預金・賃料の相続(熊本日日新聞 2016年11月2日付)
2016.11.02
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 父は死亡時、屋敷のほかに預金や貸地、貸家を持っていました。兄はそのまま住み、家賃などは自分で取っています。自分が後継者だと主張し、全部自分がもらうと言い張ります。とりあえず、預金と賃料だけでも分配してほしいのです。遺言はありません。
A 不動産の分け方については、きょうだい2人で話がつかなければ家庭裁判所に申し立てて決めてもらうしかありません。一方、預金と父親死亡後の賃料収入は、家裁の手続きは不要です。
普通預金は、あなたが単独で2分の1の払い出しを請求できます。兄の了解は不要です。定期預金は原則として、自分の分である2分の1はあなた単独で解約して払い出し請求できます。父親の印鑑と通帳も要りません。
ところで相続人の1人が銀行に赴き、亡くなった人の預金を払い出したいと申し出た場合、多くの銀行は書類を示して、相続人全員が記名の上、実印を押して、印鑑証明書と通帳の添付を求めます。これは、単独請求だと、後で他の相続人がするかもしれないクレームの処理が面倒だからです。
銀行からこのように言われて、相続人全員の協力がなければ預金を下ろす手段はないとあきらめる人がいますが、強く払い出しを求めるか、弁護士に頼んで払い出しを求めるとよいでしょう。
死亡後の賃料については、あなたにも半分の権利があり、家裁の手続きを経なくても直接兄に請求できます。拒まれたら地方裁判所で裁判すれば勝てます。
弁護士 舞田邦彦