相続放棄と借金返済の回避(熊本日日新聞 2018年4月25日付)
2018.04.25
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 相続を放棄すると、借金を返済する責任がなくなると聞きます。実際はどうなのでしょうか。また、放棄するときにはどんな手続きをすれば良いのでしょうか。その場合、何か不利益はありませんか。
A 遺産を相続する際に、もしも借金が相当な額ある場合には、相続放棄を選択できます。被相続人(相続される側の人)が亡くなったら、まずどのくらいの借金があるのかを調べる必要があります。借金(連帯保証人の責任も含む)が多額で、相続人の手に負えない場合は、家庭裁判所に相続の放棄を申し立てることになります。
ただし、相続を知ってから3カ月以内に申し立てなければなりません。もしも、3カ月以内に財産や借金の調査が終わらない場合は、期間を延ばすよう、家庭裁判所に申し立てます。
注意が必要なのは、相続人が相続財産を一部でも勝手に処分すると、放棄が認められなくなってしまうことです。財産と借金のすべてを相続する「単純承認」をしたもの、と見なされてしまいます。また、相続の放棄は撤回できません。
相続する財産が若干なりともあり、借金もあるというようなケースでは、放棄しない方が良い場合もあります。財産がある範囲を限度に借金を引き継ぐ「限定承認」という方法もあります。分からないことがあれば、家庭裁判所か弁護士に相談してください。
弁護士 松本津紀雄