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子どもの行為の責任は? (熊本日日新聞 2015年05月20日付)

2015.05.20
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 Q 私は、10歳の子どもと重い認知症の父と一緒に生活しています。もし、子どもや父が他人にけがをさせたら、子どもや父に責任はあるのでしょうか。また、私は責任を負うのでしょうか。

 A 11~12歳ごろまでの子どもや重い認知症の人は、他人にけがをさせても民事的責任を負わないのが原則です。法的な善悪の判断ができず「責任能力」がないためです。しかし、それでは被害者を救済できないため、監督義務がある者が責任を負うと法律に規定されています。監督義務のある者とは、親権者や後見人などです。
 もっとも、11歳の男児が蹴ったサッカーボールが校庭を飛び出し、避けようとしたバイクの80代男性が転倒し骨折。寝たきりとなり約1年半後に亡くなった事案で、最高裁は4月、男児の親の責任を否定しました。通常は人身に危険が及ぶと考えられない行為について、親が責任を負わないことを示したもので、第一審と第二審の判断を覆す画期的な判決でした。
 なお、仮に男児の親の責任が認められても、賠償責任保険に加入していれば対応できるでしょう。
 このほか、91歳の認知症の男性がJRの駅構内に入り列車にはねられ死亡した事案で、遺族が監督義務を怠ったとしてJRに対して損害賠償責任を負うとされた高裁判決もあります。

 こうしたことから、監督する立場にある方は重い責任を自覚しながら十分な注意を払い、保険への加入も検討しましょう。

                                  弁護士 渡辺裕介