会社合併で退職金「ゼロ」(熊本日日新聞 2018年2月14日付)
2018.02.14
労働問題 労働問題
Q 勤めている会社が合併します。合併先の会社から、私たちの会社の社員の退職金を「ゼロにしろ」との意向が働いたようです。管理職から、退職金をなくす同意書への署名押印を求められました。内容をよく確認せずに応じてしまいましたが、納得できません。争うことはできませんか。
A 退職金の支給規定を、労働者にとって不利益となるような変更をする場合は、法的にその変更を受け入れざるを得ない高い必要性に基づく合理的な判断でなければなりません。
今回のように同意書に署名押印していても、内容の説明を受けることなく「署名押印しなければ合併できない」などとせかされたような状況であれば、真意に基づく署名ではなかったことになります。
最高裁判所の2016年の判決では、退職金の支給規定変更への同意について「自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられ、基準変更により労働者に対する退職金の支給に生ずる具体的な不利益の内容や程度についても、情報提供や説明される必要がある」としています。
同意書に署名押印していても、あきらめる必要はありません。労働条件の不利益な変更が高度な必要性に基づいた合理的な内容であるかどうか、同意書への署名押印を求められたときの情報提供や説明が必要十分であったか、同意書の内容などについて、専門家の意見を聞くことをお勧めします。
弁護士 西 清次郎