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通帳、現金託された知人が死亡(熊本日日新聞 2018年5月23日)

2018.05.23
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q  知り合いの女性から預金通帳と現金を託され、「もし自分が命を落としたら、入院費用や葬式、法要などの費用、入院中に世話になった友人に謝礼を渡してほしい」と頼まれました。女性が亡くなったので要望通り清算しましたが、女性の長女から預金通帳と支払ったお金の返還を求められました。どうすれば良いのでしょうか。

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 A 委任契約は、当事者の一方が死亡すれば契約が終了すると民法で規定しています。長女は女性の相続人として、「契約は女性が亡くなったことで終了している」と主張し、返還を請求しているものと思われます。
 しかし、女性は自身が亡くなった後の預金の管理や費用の支出を、質問者に頼んでいます。女性の意思に従った行動なので、お金の返還を求められても酷な話と言えます。
 このようなケースでは見解が分かれていましたが、委任契約は当事者が亡くなった場合でも終了しないという合意を含んでいる、という判断を最高裁判所が示しました。その後の判例でも、預金通帳や支払ったお金の返還を否定しています。
 判例の趣旨からすると、長女の返還請求は認められないということになりそうです。ただし、支払ったお金の返還はともかくとしても、長女がいつになったら預金通帳の返還を求めることができるのか、という問題は残っています。この点については、今後の裁判で別の判断が示されることもあるでしょう。注意が必要です。

弁護士 三角 恒