隣家の井戸改修が原因?水の出悪く(熊本日日新聞 2019年1月30日付)
2019.01.30
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Q 30メートルほど離れた隣の家が井戸の改修工事を行いました。井戸を掘り下げて、揚水ポンプも強力なものに取り換えたようです。私の家の井戸の水の出が悪くなって困っています。損害の請求はできますか?
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A 損害の請求は可能です。ただ難しいのは、隣家の井戸の改修が原因で、あなたの家の井戸の水の出が悪くなったのかどうかの因果関係の証明です。
地下水については、だれの所有であるかや、管理に属するのか、法律上の規定がありません。河川の流水については、河川法で所有権の対象となっておらず、国や自治体が管理します。戦前の古い裁判例では、地下水は土地の所有権の一部として、土地の所有者に属するとしたものがあります。
しかし地下水をくみ上げる量によっては、同じ水脈を利用する既存の別の井戸にも影響を及ぼしてしまいます。自分の土地の地下水だからといって、他人の地下水の権利を侵害してまで、水をくみ上げることは許されません。
つまり、新たな井戸の掘削や井戸の改修によって、水脈が同じ既存の井戸に悪影響を及ぼしてしまった場合には、これまで井戸を使ってきた人の権利を侵害している、として不法行為になる可能性があります。
こうした争いを事前に防ぐとともに、地下水の適正な利用を図るために、一定規模以上の井戸の掘削や改修については、県の条例でも地域を指定した上で、事前の届け出や許可が必要となっています。
弁護士 國弘正樹