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認知症の父が遺言書(熊本日日新聞 2019年3月27日付)

2019.03.27
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 先日、父が亡くなりました。相続人は私と兄の2人ですが、兄から「遺産は全て兄に相続させる」と書かれた遺言書を見せられました。父が亡くなる直前に作ったもので、筆跡は父のものでした。ただ、父は認知症だったので内容を理解して遺言書を書いたとは思えません。

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 A お父さんの認知症が相当悪化しており、自分の財産の内容も理解できないような状況だったとすると、遺言が無効とされる可能性があります。話し合いで、お兄さんが「遺言は有効」との主張を変えないようであれば、遺言が無効であることを訴訟で確定させる必要があります。
 訴訟では、遺言書を書いた時のお父さんの状況を明らかにするため、入通院していた病院の診断書やカルテ、介護認定に関する資料、介護日誌などの証拠を提出する必要があります。裁判で遺言が無効と認められると、遺言書は存在しなかったことになります。あらためて、お兄さんと遺産分割を協議してください。
 遺言が有効とされても、お兄さんに対して「遺留分」について請求することができます。遺留分とは、遺産の一定割合を相続人が最低限もらえることを保障する制度です。今回の場合では、あなたに遺産の4分の1が遺留分として認められます。
 ただし遺留分は、あなたがお父さんの遺言書の内容を知った時から1年以内に請求しなければなりません。遺言の無効を訴訟で争うとしても、お兄さんに対して期間内に遺留分の請求をしておく必要があります。

弁護士 田畑求三