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相続時の配偶者の居住権(熊本日日新聞 2019年8月14日付)

2019.08.14
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 相続の際に、配偶者の居住権を守るための制度ができると聞きました。どのようなものですか?

 A 民法の改正で、(1)配偶者居住権(2)配偶者短期居住権-が新設されます。
 (1)は、被相続人が死亡した時に配偶者が住んでいた被相続人所有の建物を、「終身」または「一定期間」使用できる権利です。建物に対する権利を「配偶者が住む権利」と「配偶者が住む権利がある建物の所有権」に分けることで、遺産分割時の配偶者の選択肢を増やしました。
 例えば、死亡した夫の遺産に2千万円の自宅と2千万円の預貯金があったとします。相続人が妻と子1人なら、それぞれの相続分は1対1です。これまでは妻が自宅の所有権を相続すると、預貯金をすべて子が相続することになり、妻が生活資金を確保できなくなっていました。
 配偶者居住権を1千万円、配偶者居住権がある建物の所有権を1千万円と仮定します。配偶者居住権を選んだ妻は、配偶者居住権と預貯金1千万円を相続できるため、住む場所と生活資金も確保できます。この場合、子は配偶者居住権がある建物の所有権と預貯金1千万円を相続します。被相続人が遺言で配偶者に居住権を贈与することも可能です。
 (2)は、被相続人の建物に無償で住んでいた配偶者が、一定期間、家に無償で住める権利です。期間は遺言の有無などで異なりますが、配偶者は最低でも6カ月は引き続き無償で建物を使うことができます。この改正は来年4月1日に施行されます。

弁護士 渡辺絵美