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障害者の身体拘束(熊本日日新聞 2013年11月9日付)

2013.11.09
その他 その他

Q 私は知的障害のある自閉症の息子(30歳)と同居しています。息子と車で外出する際は、息子を車の座席に縛り付けることもあります。息子がパニックを起こした場合に備えての措置とはいえ、法的に問題はないでしょうか。

A 障害者に対する虐待は、障害者の尊厳を害する重大な人権侵害です。それらを防止するために、2012年6月、障害者虐待防止法が成立し、同年10月から施行されました。そして、同法上、正当な理由のない身体拘束は虐待にあたるとされています。
 質問のケースでは、車の座席に縛り付けることが身体拘束に該当することは否定できません。それゆえ、そうすることに正当な理由があるかどうかが問題となります。
 正当な理由は、(1)切迫性(本人又は家族などの生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと)(2)非代替性(それ以外の介護方法がないこと)(3)一時性(身体拘束が一時的なものであること)-三つの条件を満たした場合のみ。例外的に認められるとされています。
 障害者本人の外出の希望をかなえる場合で、他の交通手段での移動が不可能あるいは困難な状況にあり、本人の障害の特性から危険防止のために、より制限的でなく安全な方法で身体を固定し、必要がなくなれば直ちに固定を解除するのであれば、例外的に正当な理由のある身体拘束に該当するといってよいでしょう。
 また、この場合、刑法上の逮捕罪も成立しないことはいうまでもありません。

弁護士 木原 武士