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支払われない損害賠償(熊本日日新聞 2020年2月26日付)

2020.02.26
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 Q 知らない男に強制わいせつ被害に遭いました。犯人は懲役2年に執行猶予がつき、会社勤めを続けているようです。損害賠償請求では150万円の支払い命令が出ましたが、1円も手にしていません。泣き寝入りするしかないのでしょうか。

 A 犯人の不誠実さに、大変苦しんでいらっしゃると思います。判決が出ても犯人から賠償が支払われることはまれで、強制執行でも全額を支払わせることは難しいのが現状です。
 強制執行が難しい理由の一つは、被害者に犯人の財産の特定を求められている点です。見知らぬ犯人から被害を受けたような場合では、犯人の勤め先、不動産、銀行口座といった情報が分かりません。そのため、多くのケースで被害者が泣き寝入りを強いられてきました。
 こうした問題を解消するために民事執行法が改正され、犯人の財産に関する情報を入手できるようになりました。具体的には(1)犯人の不動産は登記所に(2)犯人の勤務先は市町村や年金機構に(3)犯人の銀行口座や株といった資産は銀行などの金融機関に-それぞれ情報の開示を求めることができます。泣き寝入りしてきた被害者の救済につながる可能性が、格段に高まることになります。
 相談者のケースでも、犯人の勤務先を突き止めれば、給料の差し押さえが可能だと思われます。なお、この改正法は今年4月1日から施行されます。
 被害者の損害賠償請求や強制執行に関しても、不安な点は弁護士にご相談ください。県弁護士会では、犯罪被害者の電話相談=TEL090(9568)1157=を無料でお受けしています。

弁護士 高木百合香