専業主婦の休業損害(熊本日日新聞 2020年7月15日付)
2020.07.15
交通事故 交通事故
Q 子供がいる専業主婦です。交通事故で腕をけがし、治療のため通院するなど、思うように家事ができません。仕事をしていないので減収はないのですが、専業主婦には休業損害の賠償請求はできないのでしょうか。
A 休業損害とは、事故などによるけがが原因で働けない期間が発生した場合に、その休業によって得られなくなった分の損失のことをいいます。ご質問のような家事従事者(家族のためにもっぱら家事労働に従事する者)は、けがが原因で減収という金銭的な損害が生じていないように思えますが、家事労働も家庭を支える重要な労働と評価されるため、休業損害は認められています。
休業損害の計算方法ですが、例えば給与所得者であれば、けが以前における収入額を基に、欠勤により失った給与額を計算します。家事従事者の場合に収入額をどうみるかですが、一般的に、女性労働者の全年齢の平均賃金を収入額とみなして計算することとされています。平均賃金は、厚生労働省が公表している「賃金センサス」という統計調査の結果に記載されています。
なお、家事従事者にパートなど一定の収入がある場合(いわゆる兼業主婦)でも休業損害は認められ、この場合は、実際の収入額と女性労働者の全年齢平均賃金のいずれか高い方を選択して計算することになります。家事労働の休業日数や期間をどう考えるかなど、具体的な休業損害の計算は事案により異なります。一人で悩まず、弁護士にご相談ください。
弁護士 村上将門