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性犯罪、賠償させるには(熊本日日新聞 2021年3月17日付)

2021.03.17
刑事事件 刑事事件

 Q 知らない男に胸を触られる強制わいせつの被害に遭いました。私は精神科病院に通院し仕事もできない状態です。精神的・経済的被害を償ってもらうには、どうしたらいいですか。

 A 強制わいせつや強制性交といった性犯罪は「魂の殺人」と言われ、被害者は事件の後もさまざまな苦しみを受けます。償ってもらうのは当然の権利です。
 犯人が自分の意思で償う場合は、示談交渉で被害者の権利を決めることになります。犯人との交渉なんてできないという方は、弁護士にご相談ください。
 次に、犯人が本当に払ってくれるか信用できない場合や、犯人が賠償を拒否したり示談交渉が決裂したりした場合は、裁判での解決が有意義です。
 通常は、刑事裁判と別に民事裁判を起こして権利を決めますが、被害者のための特例として(1)犯人と民事上の賠償で和解している場合、刑事裁判で公判調書に記載して被害者の権利を確定させる「刑事和解制度」(2)手数料2千円で申し立てをし、刑事裁判の後に4回以内の審理で被害者の権利を決定する「損害賠償命令制度」があります。(2)の制度を利用できるかどうかは罪によりますが、強制わいせつ罪では利用できます。
 また、犯罪によって家族を亡くしたご遺族や、3日以上の入院を余儀なくされたり障害が残ったりした被害者は、国の「犯罪被害給付制度」を利用して、給付金を受けられる場合があります。
 最近では全国で被害者のための条例制定が進んでいます。熊本は遅れていますが、長洲町は10年以上前から全国に先駆けて見舞金制度を導入しています。今後、被害者の経済的負担が軽くなるよう、賠償を立て替える制度なども充実していくでしょう。県弁護士会は無料で犯罪被害者の電話相談=TEL090(9568)1157=を受けていますので、いつでもご相談ください。

弁護士 高木百合香