高齢者の財産管理(熊本日日新聞 2021年3月31日付)
2021.03.31
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Q Aさんは現在、自己所有の賃貸アパートを管理していますが、高齢になり判断能力が低下してきていると感じています。今後、アパートの管理を続けることに不安があり、何かいい方法はないかと悩んでいます。
A 自分の財産を他者に管理してもらう制度として、任意後見制度などが考えられます。しかし、これを利用するためには本人の判断能力が相当程度低下していることが要件になりますので、高齢のため判断能力に不安があるという程度では利用できません。
そこで「家族信託」を利用することが考えられます。「家族信託」とは、その意味について法律上の定義はありませんが、家族の財産の管理・処分等のために信託を用いるものを指す場合が多いです。上記のようなケースでは、例えば財産の管理を託せる程度に信頼している子どもがいれば、子どもと賃貸アパートの管理を目的とした信託契約を結ぶことが考えられます。
Aさんは自身の判断で、財産のどの範囲を信託財産として管理を任せるか決めることができます。上記のケースでは、賃貸アパートとその管理に必要な金銭のみを信託財産として管理を任せ、家賃収入を得ることができます。また、Aさんの当面の生活費以外の金銭などの管理を任せることもでき、そうすることでAさんが特殊詐欺などの被害に遭う可能性を減少させるという効果も期待できます。
弁護士 立山晴大